https://www.kogensha.jp/shop/detail.php?id=4092

「性解放理論」を超えて(34)
フランクフルト学派の群像~マルクーゼ

 人類は今、神とサタンの総力戦の中に生きています。
 「統一思想」すなわち「神主義」「頭翼思想」によって生きるのか、神の言(ことば)を否定する思想を選択するのか…。
 台頭する性解放理論を克服し、神の創造理想と真の家庭理想実現のための思想的覚醒を促す「『性解放理論』を超えて」を毎週月曜日(予定)にお届けします。

---
大谷明史・著

(光言社・刊『「性解放理論」を超えて』より)

四 フランクフルト学派を超えて
(二)フランクフルト学派の群像

3)マルクーゼ
 マルクーゼは、“内なる自然”の解放すなわち本能の解放による、抑圧なき文明、エロス文明の到来を目指しました。彼は人間と自然がエロス的に調和していた、ギリシア神話の世界を理想としたのです。すなわち、「偉大なる拒否」(the Great Refusal)のイメージと言われているオルフェウスとナルシス、および彼らの同族である「神への反逆者」のディオニソス(Dionysos)を理想としていました(※4)。正に神の言に反逆する精神でした。

 マルクーゼに関しては、フロイト左派として、すでに詳述しました。

4)ベンヤミン
 ベンヤミンによれば、子供時代の至福の経験とは、自然の対象との交わりであり、エロス的衝動に基づくものだと言います。そして彼は、そのような“主体と対象が分離しない状態”を理想としたのです。ベンヤミンもマルクーゼと同様、“内なる自然”が解放される状態を理想としました。

 芸術についてのベンヤミンの理論は、シュルレアリスム(Surrealism, 超現実主義)と直接に結びついていました。結婚をはじめとして全ての礼会的規律に反対していたベンヤミンは、シュルレアリスムの表現方法と、その理念に共感していました。

 社会主義革命によって人類が解放されたならば、人類は過去の失われた瞬間を全て回復し、あらゆるものが新鮮な驚きをもたらした幼年時代の楽園(エデン)におけるような生活を再び始めることができるであろうと、彼は考えました。

 ベンヤミンはマルクス主義者であり、武装蜂起を密(ひそ)かに計画する革命家のようでもあり、シュルレアリスト(超現実主義者)でもありました。彼はナチスから追われ、フランスから脱出して、アメリカに亡命する途中、スペイン警察に拘留され、自ら死を選びました。

5)ハーバーマス
 フランクフルト学派の後継者となったハーバーマスは、政治的な公共性の領域において自由な政治的討論が発展して、人々が暴力的な支配から解放されるようになることを民主主義の理念と見なし、その理念が近代社会を導いてきたと考えました。モノローグによる主観中心的理性からコミュニケーション的理性を目指したのです(※5)。

 そしてハーバーマスは、このコミュニケーション理論への理論的枠組み(バラダイム)の転換こそが、批判理論の本来の目標である近代社会批判を続行していくことを可能にするものであると主張しました。すなわち、近代においては、理性の道具化だけが進展したのではなく、コミュニケーション的合理性も発展してきたのであって、その潜在力をきちんと評価すべきだというのが、ハーバーマスの立場でした(※6)。そして、そこから彼の師であるホルクハイマーとアドルノの批判理論との訣別(けつべつ)がなされたのです。

 ハーバーマスのコミュニケーション理論は、真理を人間同士の合意によって決定するということであり、正に神の言の無視であり、真理の絶対的な基準を喪失したものであると言わざるを得ません。

---
※4 徳永恂(まこと)『現代批判の哲学』東京大学出版会、1979(280-81)
※5 小牧治(おさむ)・村上隆夫『ハーバーマス』(161-62)
※6 細見和之『フランクフルト学派』(182-3)

---

 次回は、「ポスト構造主義とは~マルクス主義との類似性」をお届けします。


◆『「性解放理論」を超えて』を書籍でご覧になりたいかたはコチラ