https://www.kogensha.jp

「性解放理論」を超えて(25)
マルクーゼの思想②~エロスとタナトス

 人類は今、神とサタンの総力戦の中に生きています。
 「統一思想」すなわち「神主義」「頭翼思想」によって生きるのか、神の言(ことば)を否定する思想を選択するのか…。
 台頭する性解放理論を克服し、神の創造理想と真の家庭理想実現のための思想的覚醒を促す「『性解放理論』を超えて」を毎週月曜日(予定)にお届けします。

---
大谷明史・著

(光言社・刊『「性解放理論」を超えて』より)

三 フロイト左派を超えて
(二)マルクーゼ

2)エロスとタナトス
 マルクーゼはフロイトの提示したエロスとタナトスの闘争をマルクーゼ流に解釈しました。フロイトは、エロスを人と人を結びつける友好的なものとして、性よりも愛着に重きを置きましたが、マルクーゼはエロスを徹底的に性的なもの、リビドーに等しいものと見ました。そして死の本能であるタナトスを労働に置き換えて、労働に対するリビドーの勝利が、タナトスに対するエロスの勝利であると見ています。ポール・ロビンソンはマルクーゼの主張を次のように説明しています。

 要するにそれはテクノロジーの発展が疎外された労働の必要性を実質的に排除し、オートメーションがいっさいの労働の代役をはたす時代がやってくるだろうというものである。経済装置が完全に自力で回転するようになれば、近代資本主義の台頭に同伴した性抑圧のような、いかなる技術上の必要性も不要になる。人間の肉体はふたたび労働の道具から快楽の道具に復帰する。肉体の再性化は、人類のリビドー・エネルギーをよみがえらせ、タナトスにたいするエロスの究極の勝利を約束するであろう(※35)。

 マルクーゼはエロスを徹底的に性的なもの、タナトスを労働の苦役とみなしました。しかし労働が苦役であったのは、奴隷社会、封建社会、そして初期の資本主義社会のような強権社会においてなされたことであり、本然の社会においては、労働は喜びとなるのです。

 「統一思想」から見れば、労働は本来、創造性の発揮による万物主管であり、神から与えられた三大祝福の中の第三祝福です。第一祝福は人格の陶冶による個性完成、第二祝福は夫婦の愛を中心とした家庭完成、そして第三祝福は創造性の発揮による万物主管です。第二祝福に属する性愛と第三祝福に属する労働は対立するものではありません。したがって、エロスと労働を敵対的なものと見るのは誤りです。

---
35 ポール・ロビンソン『フロイト左派』(217-218)

---

 次回は、「マルクーゼの思想③~非抑圧文明としてのエロス文明」をお届けします。


◆『「性解放理論」を超えて』を書籍でご覧になりたいかたはコチラ