2022.03.20 17:00
ユダヤ教を刷新したエズラ
岡野 献一
『FAXニュース』で連載した「旧約聖書人物伝」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
『原理講論』に、「バビロンの捕虜生活から帰還してきたイスラエル民族は…破壊された神殿を新築し、また…過去の罪を悔い改めながら、律法を研究し、信仰の刷新運動を起こすことによって『信仰基台』を復帰してきた」とあるように、捕囚から解放されたイスラエル民族は、約400年間のメシヤ降臨準備時代を迎えます。そのとき活躍した人物がエズラやネヘミヤです。
絶対信仰で神殿と城壁の修理
さて紀元前539年、ペルシャ王クロスはバビロンを征服します。クロス王は、ユダヤ人が神を熱心に崇拝し、エルサレムを慕いながら還故郷を熱望する姿に心動かされ、彼らの解放を布告します。それは70年後のエルサレム帰還を予告したエレミヤの預言の成就でした。
喜び勇んでエルサレムへ向かった会衆は4万2千人に上りました。彼らは王の血統を引くゼルバベルを中心に、まず荒廃した神殿の再建に取りかかります。神殿の基礎が完成した時、彼らは神を賛美し、感動のあまり大声を上げて泣きました(エズラ記3章12節)。
それほどに民たちは信仰熱心でしたが、しかしみ旨は簡単に成るものではありません。隣国サマリヤ人の妨害が始まったのです。サマリヤ人はクロス王に再建工事の中止を求めました。クロス王はユダヤ人に深く同情していたので、これに応じることはありませんでしたが、次王の治世になった時工事中止の布告が出されます。その時代はユダヤ人にとって大きな試練の時でした。しかし彼らは時の到来を信じ、絶対信仰を持って着々と工事を進めました。するとどうでしょう。ダリヨス王の治世となって、再び許可が下り、21年目にして神殿再建の夢が果たせたのです。
さて、ペルシャ帝国の重臣であったネヘミヤがエルサレムに帰還し、彼の指揮のもとで城壁の修復工事が行われました。これに対しても周辺の敵国からさまざまな妨害が加えられます。しかし民たちはネヘミヤを中心に一致団結し、武器を持って防衛しながら、ついに堅固な城壁を完成させることができました(ネヘミヤ記6章15節)。まさしくそれは絶対信仰と一体化の勝利です。
ユダヤ教刷新400年でメシヤを迎える
こうして神殿再建と城壁修復とが終了し、外的な環境は整いました。しかしいくら立派な指導者をいただいて基盤を築いたとしても、民の一人一人がみ言に堅く立ち、信仰を確立していない限りは、神のみ旨成就はなかなかおぼつきません。そこでネヘミヤは神殿前の広場に全会衆を呼び集めました。
集まった会衆は約5万人です。その大集会の場で、律法(み言)に精通した学者エズラが立ち、律法の書を訓読しました。エズラは、神の民はみ言とその精神によって治められなければならないという明確な考えをもってエルサレムに帰還していた人物です。それまで民たちは律法の意味を十分に理解していませんでした。しかしエズラが意味を解き明かしつつ訓読すると、会衆は感極まって泣いたのです(ネヘミヤ記8章9節)。いたく感動した民は、その後も集会を開きつつ、エズラの指導のもとで熱心にみ言を学んでいきました。こうやって、民の心にみ言の種がまかれ、しっかりと根を下ろし、やがて豊かな信仰の実を結んでいくようになるのです。
このエズラのユダヤ教刷新運動によって約400年後にイエス・キリストを迎えることとなります。またユダヤ教徒は「主の大いなる恐るべき日が来る前に、わたしは預言者エリヤをあなたがたにつかわす」(マラキ書4章5節)という預言成就の日をひたすら待ちわびたのです。
ちなみに、エズラはキリスト教の教父たちからマラキ書の作者だと目されている人物です(P・ミルワード著『旧約聖書の智慧』116ページ)。同時性から見てエズラはルターと同じ活躍をした人物だったと言えます。
真のお父様は次のように語っておられます。
「4000年間という大変な受難の中で、神様はイスラエル民族を歴史的迫害の中で分別させ、400年前からメシヤを送ることを約束して、預言者マラキ(エズラと同一人物とされる)を送り、民族編成から国家編成のできるユダヤ教と成し、そのユダヤの国をしてローマへと総進軍すべき…夢を見ていたのです」(1985.4.7)と。
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次回は、「同胞全滅の危機救ったエステル」をお届けします。