2022.03.06 17:00
異国の王を感化したダニエル
岡野 献一
『FAXニュース』で連載した「旧約聖書人物伝」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
バビロニアの王ネブカデネザルがエルサレムを征服した時、南ユダの王をはじめ多くの民がバビロンへ連行されていきました。ネブカデネザルは有能な人材を得ようと南ユダの王侯貴族の中から4人の若者を選抜させ、連行しますが、その1人がダニエルでした。ダニエルの名は「神はわが審判」という意味です。
神は特別な才能与え恩恵を示す
ダニエル、ハナニヤ、ミシャエル、アザリヤの4人はバビロンの宦官(かんがん)のもとに3年間預けられ、名前もバビロニア名を付けられ、王宮に仕えるための準備としてのさまざまな教育、訓練を受けました。
聖書には「この4人の者には、神は知識を与え、すべての文学と知恵にさとい者とされた。ダニエルはまたすべての幻と夢とを理解した」と記されています。かつてヤコブ一族がエジプトに移住した時、神はヨセフに夢解きの能力を与え、特別な恩恵を示されたように、バビロン捕囚の時も神はヨセフと同様、ダニエルに夢解きの特別な才能を与えて恩恵を示されたのでした。
さて、宦官がダニエルら4人を養成するのに、学問面の教育だけでなく、健康にも注意して養うため、毎日豪勢な食事を準備していました。ところがその料理全てが偶像への供え物のお下がりです。イスラエルの神の戒めに忠実だったダニエルらは、その食事には一切手を付けません。その信仰姿勢に宦官は閉口しますが、しかしダニエルら4人は絶対信仰によってその難しい環境圏をも乗り越えて、改善していきました。そして彼らは優秀な成績をもって3年の教育期間を修了し、やがて王の宮廷に仕える身となったのです。
ある時ネブカデネザル王は巨大な金の像を造って全国の高官を集め、落成式を行いました。その落成式にはダニエルを除く3人が参席しますが、彼らは偶像を一切拝みません。怒った王はその3人を燃える溶鉱炉に投げ込みました。ところが奇跡が起こり3人は無傷で溶鉱炉から出てくることができたのです。あまりのことに王はいたく感動し、かえって3人の地位を上げました。
さてバビロニアが滅亡し、ペルシャ帝国の治世となりました。バビロンの都はダリヨス王によって治められますが、王はダニエルをとても重んじました。
民族の信仰衰退期に苦難の道歩む
しかしそれを快く思わない高官たちが、ダニエルを陥れようと画策してきます。ダニエルが真の神に対し日々欠かさず敬拝しているのを知り、彼らは「王以外のものを拝む者は死刑に処す」という禁令書を王に取り付けて、ダニエルを糾弾してきたのです。
結局、その信仰の理由によってダニエルはライオンの穴に投げ込まれてしまいます。ところがここでも奇跡が起こり、ダニエルはライオンに食われることなく、無事生還することができたのです。ダニエルが絶対信仰で勝利した姿に、ダリヨス王は深い感銘を受け、むしろ「ダニエルの神をあがめよ」という勅令を出したほどです。
ダニエルが通過した立場は、み旨の道を開拓された真のお父様の世界とも通じるものがあります。ダニエルは異国の地で、名前もバビロニア名に変えられ、また信仰上の理由から高官から憎まれて、無実の罪で獅子の穴に投げ込まれるという苦難を受けました。しかし絶対信仰によって周りを感化し、最終的には王をも自然屈伏させているのです。このような路程は、神によって立てられた中心人物たちが行くべき道なのだと言えます。
『原理講論』は次のように述べています。「イエス当時のユダヤ人の指導者たちと同じくその信仰の方向を誤れば…いかに篤実(とくじつ)な信仰生活をしてきたとしても…みな水泡に帰してしまわざるを得ないのである。それゆえに、ダニエルは『賢い者は悟るでしょう』と語ったのである」(602ページ)と。
神に選ばれたダニエルが、信仰衰退の時代に苦難の道を歩んだように、メシヤを待ち望んだユダヤ教徒が不信してつまずいた時、イエス様も苦難の道を歩まれました。再臨主もまた、選民の不信によって苦難の道を歩むことがあり得るということを、今日のクリスチャンたちは悟らなければなりません。
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次回は、「異邦人に遣わされたヨナ」をお届けします。