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統一原理Q&A 25
摂理的同時性について

 アプリで読む光言社書籍シリーズ、「統一原理Q&A」を毎週日曜日配信(予定)でお届けしています。
 統一原理に対する著者の分かりやすい解説がコンパクトにまとめられています。統一原理への理解を深めるために、ぜひ読んでいただきたいシリーズです。

白井康友・著

(光言社・刊『統一原理Q&A み言による神の心情の再発見』より)

Q:「摂理的同時性」とは新しい概念ですが、従来の歴史観の中でこれに近い考え方があるのでしょうか。また、「摂理的同時性」の意味や、それが生じる根本的な理由がよく理解できませんので、詳しく説明してください。

A:まず、同時性とは何を意味しているか考えてみると、『原理講論」には「ある時代がその前の時代の歴史路程とほとんど同じ様相をもって反復する」(436頁)と書かれています。

 例えば法王の不信仰ゆえに、その権威が地に落ち、ついにクレメンス五世は1309年に法王庁を南フランスのアヴィニョンへ移し、以来約70年間歴代の法王たちはフランス王の拘束を受けながら捕虜のような生活をしたわけですが、それは正に、かつてユダヤ民族が不信仰ゆえにサタン世界であるバビロンに捕虜として連れていかれ、70年間苦役生活をした期間と同時性的内容といえます。

 この出来事は一般の歴史家も認めていることであり、歴史参考書には、法王がアヴィニョンヘ捕囚された内容を、古代へプライ人の故事に例えて、法王のバビロン捕囚と呼ばれていると説明されていますが、実に歴史の反復性を物語る最も顕著な実例であるといえます。

 この同時性という考え方は、決して突然現れた概念ではありません。その歴史的経過をたどってみたいと思います。歴史の反復性とは、言い換えるならば「循環史観」のことであり、古代ギリシャのツキジデス、ディオドロスから出発して、近世のヴィコ、エドワード・マイアー、さらには20世紀に入ってシュペングラーと続き、それらを追求し、従来の循環史観を集大成して、さらに新たな科学性を賦与したのがトインビーの『歴史の研究』です。

 そのトインビー史観の最も基本的な原理は、すべての文明が同時代的であるということです。それも「ある一時期だけが同時代的なのではなく、文明の全コースが三段階に分かれており、それぞれの段階が同時代的だと気づいた時、初めて文明が異質なものでありながら、それぞれの段階が並行していることを発見した」(山本新編『トインビー入門」経済往来社、25頁)わけですが、それは「段階論」と呼ばれています。

 その骨子は「生まれた文明は阻止されたり流産したりすることなく、すくすくと成長するならばやがて挫折し、ついで解体し、ついには消滅に至ると言うことである。誕生してから、成長、挫折、解体の三段階を経て、死に至る過程を23の文明について比較研究するのが段階論の仕事」であり、「現存している6つの文明がこれからどうなるかは分からない。しかし、それ以外の17の文明は等しくこの三段階を経て死んでいった」(前掲書27頁)とトインビーは考えています。

 このトインビー史観の「同時代的」という考え方は、統一原理の「同時性」と類似しており、文明が挫折して生ずる動乱期は、どの文明でもほぼ400年つづくという考え方も非常に類似しています。李相憲先生が「彼は歴史家として、洗礼ヨハネ的な立場にあったのではないだろうかと思います」(ファミリー掲載「統一思想講座」歴史論)と言われるゆえんです。

 しかし、歴史の同時性がどうして生じるのか、その理由については今日までの歴史家たちにも、ほとんど理解されていないといっても過言ではありません。それは統一原理において初めて明確に解明されましたが、まずその結論からみてみると、神の蕩減復帰摂理に起因しており、それゆえに摂理的同時性と表現されるのです。

 さて、統一史観(統一原理から見た歴史観)の立場から人類歴史を見つめてみますと、復帰摂理の目的を成し遂げていく過程においてなされたすべての事実が歴史を形成してきたといえます。「原理講論」4367頁によると、

①その復帰摂理の目的を達成するには、人間の側で「メシヤのための基台」を造成し、メシヤを迎えなければなりません。

②しかし「メシヤのための基台」を復帰する摂理路程を、担当していた中心人物が果たせなかった場合「人間に対する予定」は相対的なので、その人物を中心とした一時代は終了してしまいます。

③ところが、「み旨に対する予定」は絶対的ですから、神は他の人物(代理人物)を立たせて、「メシヤのための基台」を復帰するための新しい時代を再び摂理なさるのです。

④したがって、この新しい時代は、その前の時代の歴史路程を蕩減復帰する時代となるので(蕩減復帰とは状況や場面が再現するため)前時代と同じ路程を反復するようになります。こうして摂理的同時性の時代が形成きれていきます。

 正に同時性の内容はここに起因しているわけですが、しかし「ほとんど同じ様相」であって、「同一の様相」ではありません。その理由は、復帰摂理を担当した人物たちは前時代の縦的蕩減条件を横的に蕩減復帰していくのですが、復帰摂理が延長されるにしたがって次第に縦的蕩減条件が附加され、それに伴って横的蕩減条件も次第に加重されてくるため、同時性の内容と範囲が拡大し異なってくるので、両時代は完全な相似形とはならないのです。ゆえに、歴史は螺旋状を呈するのです。


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 次回は、「縦からなる横的な蕩減復帰とは」をお届けします。