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「性解放理論」を超えて(20)
ライヒの思想②~オルゴン・エネルギー

 人類は今、神とサタンの総力戦の中に生きています。
 「統一思想」すなわち「神主義」「頭翼思想」によって生きるのか、神の言(ことば)を否定する思想を選択するのか…。
 台頭する性解放理論を克服し、神の創造理想と真の家庭理想実現のための思想的覚醒を促す「『性解放理論』を超えて」を毎週月曜日(予定)にお届けします。

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大谷明史・著

(光言社・刊『「性解放理論」を超えて』より)

三 フロイト左派を超えて
(一)ライヒ

2)オルゴン・エネルギー
 ライヒはフロイトのリビドー理論を唯物論の立場から推し進め、性のエネルギーを物理的に発見できると考えました。そしてそれをオルゴン・エネルギー(Orgone energy)と呼び、その発見に晩年を捧げたのです。ポール・ロビンソン(Paul A. Robinson)は次のように書いています。

 生涯のおわりにさしかかってライヒは性エネルギーというフロイト流の仮説のみを、ひたすら「実証可能な」論理的帰結にまで追いこもうとしたのであった。この帰結こそ、フロイト派をも新フロイト派をもひとしく震憾させたリビドーの物理的実体の発見にほかならない。……リビドーとは電流であり、オルガスムとは壮大な電気あらしにほかならない。実験結果はもっともらしくこう総括されている。「人体は精巧な発電機にすぎない(※4)」。

 1939年、ライヒはついにオルゴン・エネルギーを発見したと宣言しました。そしてライヒの余生はこのエネルギーの特性調査と、内蔵する巨大な治癒力の開発に捧げられました。1951年に至り、ライヒはオルゴン・エネルギーこそ、物理学の追求する宇宙の統一的な力であるという、誇大妄想的な理論を展開しました。ポール・ロビンソンによれば、

 最初は生命に特有なエネルギーと規定されていたのだが、1951年にはいっさいの実在がそれから発達する初発の要素であると再規定されている。物質もふたつのオルゴン・エネルギーの流れの性的抱擁ないしは交錯(こうさく)によってつくりだされる。銀河系、北極光、ハリケーン、万有引力は、みないちようにオルゴン・エネルギーの変容形態とされた。要するに物理学の初学者が夢みがちな統一場の理論をはるかにうわまわる、けたたましい理論をライヒは提唱したわけである(※5)。

 ライヒによれば、全ては生命力の営みであり、宗教体験も、生命力の興奮であり、細胞の生電気的な荷電に基づくものでした。ライヒはさらに、人類歴史はオルゴン・エネルギーが自己意識になる過程であると主張しました。ところが自己意識は、人間から感性的・生物的自発性を剥奪したのであり、自己意識こそ不安の根源であると言うのです(※6)。ライヒは唯物論から出発したにもかかわらず、心理的な結論に達してしまいました。

 ライヒはリビドーを物理的エネルギーと考え、その発見に晩年を捧げました。しかし性的エネルギーは本能的なエネルギーであり、物質的なエネルギーではありません。それを物理的、定量的に捉えようとするところにライヒの誤りがありました。不老長寿の薬を探し求めた秦の始皇帝のように、ライヒは妄想にとりつかれてしまいました。そして彼は、精神を病み、悲劇的な最期を遂げたのです。

 ライヒはオルゴン・エネルギーを追い求め、それを物理的に発見しようとしましたが、それは無謀な試みでした。そうでなくて真(まこと)の愛のエネルギーを追求すべきでした。真の愛は、物理的に、実験的に発見されるようなものではなくて、主体と対象が神の愛を核として、互いにために生きるときに実現されるのです。

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4 ポール・ロビンソン『フロイト左派』せりか書房、198369-72
5 同上(75
6 同上(78

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 次回は、「ライヒの思想③~性の解放」をお届けします。


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