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「性解放理論」を超えて(19)
ライヒの思想①~性が人間の核心

 人類は今、神とサタンの総力戦の中に生きています。
 「統一思想」すなわち「神主義」「頭翼思想」によって生きるのか、神の言(ことば)を否定する思想を選択するのか…。
 台頭する性解放理論を克服し、神の創造理想と真の家庭理想実現のための思想的覚醒を促す「『性解放理論』を超えて」を毎週月曜日(予定)にお届けします。

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大谷明史・著

(光言社・刊『「性解放理論」を超えて』より)

三 フロイト左派を超えて

 フロイトは精神分析によって、患者が無意識の中で恐れていた抑圧された記憶に立ち向かうようになれば、神経症は治ると考えていました。ところがフロイトの弟子たちの中から、それでは不十分であり、あらゆる抑圧を取り除いて、性のエネルギーを解放することによって神経症は治ると主張する、フロイト左派が生じました。フロイトはそのような弟子たちの主張に不安を憶(おぼ)え、やがて彼らと袂(たもと)を分かつようになりました。本論においては、フロイト左派の代表としてのライヒとマルクーゼに焦点を当てて、「統一思想」の観点から彼らの思想を批判、克服します。

(一)ライヒ
 フロイトのリビドー理論を受け継いで、それを性欲理論として極めたのがウィルヘルム・ライヒ(Wilhelm Reich, 1897-1957)です。ライヒは、性的な抑圧を取り去り、性的な満足(オルガスム、orgasm)を得ることによって神経症は治ると考え、そのように指導することによって、患者を治療しようとしました。やがて、自分こそはフロイトをフロイト以上に完成させる人間だと考えて、ライヒはオルガスムの教祖と化していきました。以下、ライヒの思想の要点と、それに対する「統一思想」の見解を述べます。

1)性が人間の核心
 性的なエネルギーが人間の核心であるというのがフロイトの原点でした。ライヒもそれをそのまま受け継いだのです。彼は『性と文化の革命』の中で、「人間の感情や思考の構造を支配しているのは性のエネルギーだ」、「心の構造の核心は性の構造であり、文化構造は本質的には性欲求によって支配される」、「生きていく幸福の核心は性の幸福だ」と書いています(※1)。

 ライヒはさらに、「性器的に健康な人びとだけが、自発的にしごとをすることと、自分たちの生活を非権威主義的に自ら決定することができる(※2)」、「あたらしい世代の教育者、親たち、教師たち、政府のリーダーたち、経済学者たちは、まず、自分自身が性のうえで健康でなければならない(※3)」と言って、性的に健康な人だけが、よく仕事ができ、リーダーとなる資格があると言います。

 ライヒが「性が核心である」というのは、フロイトの観点を受け継いだものです。「統一思想」から見れば、人間の心の核心になっているのは心情(愛)であり、心情を中心として、生心(エゴを含む)と肉心(性を含む)が主体と対象の関係で円満な授受作用を行うのが、人間の本来の姿です。

 ライヒは性的に健康な人だけが、よく仕事ができ、リーダーになり得ると言います。しかしそうではありません。愛と規範でもって性をよくコントロールできる人が、そうなり得るのです。性的に活発なだけでは動物と何ら変わりないのです。

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1ウィルヘルム・ライヒ、中尾ハジメ訳『性と文化の革命』勁草書房、1969xi –xiv
2 同上(247
3 同上(273

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 次回は、「ライヒの思想②~オルゴン・エネルギー」をお届けします。


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