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新 堕落性の構造 14

 現代人に不幸を招来する「心のゆがみ」。そんな悩みの尽きないテーマをズバッと解説! 人間堕落の根源からその原因を究明している一冊です。毎週木曜日配信(予定)でお届けします。

阿部 正寿・著

(光言社・刊『こう解ける! 人生問題~新 堕落性の構造』より)

5 ケチは世間を狭くする

◉どケチぶり様々
 今日は大型不況とかで、ケチの効用が見直されているようですが、ケチはいつの時代にもありました。

 江戸期の作家、井原西鶴の『世間胸算用』に、こういうのがあります。ある男がケチで有名だったが、その母親も、その男を生んだだけあって凄(すご)かった。嫁に来た時に持参した下駄を53年間、歯がちびるまで履いたが、犬が片方をくわえていったので、泣き泣き残りの片方を風呂の薪(まき)にしたという話です。

 題は忘れましたが、落語にもこんなものがありました。多分熊さん八つぁんだろうと思いますが、「俺はめしはタクアンとお茶づけだけで食う」と言えば、もう1人は「それはぜいたくだ。俺は梅干しを1つ置いて、それをジッと眺め、ああ!酸っぱいと思ってめしを食っている」と自慢します。

 さらには灯を使うのはもったいない、闇夜に物を捜すときは薪で頭を殴って目から火花を出してその明りで捜すという始末です。こうなれば何をか言わんやです。

 こういう話は誇張されたものですが、もっと身近な例はいくらでもあります。ある御婦人は、着物はもっているのですが、着るのが惜しくて、いつも古ぼけたのを着ていました。糸や布切れまで、何十年間も大事に取っておいたのですが、いざ使おうとフタを開けてみると、ボロボロで使えなくなっていました。

 お金はバッチリ貯(た)め込んでいて、食費をケチって、栄養が良くないため病気になり、薬を飲んでも効かなくて困ったそうです。こうなれば悲劇です。

 こういう人は節約の時節柄、首相に依頼して節約庁長官にでも就任していただくことです。そこまでいかなくても、最近はデパートの包装紙が美しいので捨てるのがツイもったいなくて貯めておき、結局使わずに紙クズの山をつくるということは、私たちが日常生活で毎日経験していることです。

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 次回は、「節約は生き、ケチは滅ぶ」をお届けします。


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