2022.02.02 12:00
スマホで立ち読み
『よくわかる勝共理論』(9)
共産主義社会とは「生産手段を共有する社会」
好評シリーズ「ほぼ5分でわかる勝共理論」でおなじみの、中村学講師の著作『よくわかる勝共理論~日本と世界の平和のために』(光言社)の一部を「立ち読み」でご覧いただけます! 毎週水曜日にお届けします。
反共を超えた、「勝共」を理解するためにぜひ読んでおきたい一冊です。
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中村 学・著
第二章
マルクスの動機
共産主義社会とは「生産手段を共有する社会」
さて、ここで共産主義がどのような社会を目指しているのかを簡単に説明しておきましょう。それが分からないと、マルクスの思いが理解しづらいからです。
実は、共産主義のアイデアは、マルクスが初めて思いついたものではありません。古くは古代ギリシャの哲学者であるプラトン(BC427~BC347)の著作、『国家』の中にその原型というべきものが登場します。
また、マルクスが生まれた当時のヨーロッパでは、多くの人が共産主義について議論していました。それでマルクスが考えた共産主義のことを、他の共産主義と区別して、特に「マルクス主義」と呼んだりします。
共産主義の「共」は「共有」の「共」です。「産」は「生産手段」の「産」です。ですから共産主義とは何かを一言で説明すると、「生産手段を共有する社会」となります。ちなみに生産手段とは、経済学上の言葉で、生産に必要なすべてのものを指します。例えば会社や工場、機械や道具、あるいは原材料などです。
資本主義社会では、資本家がモノを売って利益を得ます。モノが売れなければ損をします。儲(もう)かるかどうかは、その資本家次第です。
このように、資本主義社会では手元にあるお金(=資本)をどう使うかはその人の自由です。派手に使ってもよいし、貯金をしてもよい。資本金を元手に、さらに借金をして大きな事業を始めてもよい。この制度のことを私有財産制と言います。
そして資本主義社会では、当然に貧富の差が現れます。資本がある人は、さらにそれを増やすチャンスがありますが、資本がない人が増やすのは容易ではありません。最近では、貧困家庭の子供がさらに貧困になりやすいという「貧困の連鎖」が問題になっています。資本主義社会では、貧富の差は必然的に生じてしまうものです。
特にマルクスの時代のヨーロッパは貧富の差がかなり激しいものでした。当時は社会全体が、農業から工業へと移り変わっていった時代です。田舎の農民が都市へやってきて、工場の労働者として働きました。その労働環境は極めて劣悪でした。暗く、汚く、危険な工場で、女性も子供も長時間働きました。そしてわずかな賃金しか受け取ることができませんでした。現在の日本では、労働者の立場がある程度保護されていますが、当時はそんな仕組みはなかったのです。むしろ当時の権力者たちは、こぞって大金持ちと手を組みました。ですから労働者たちの境遇は、今からは想像できないほど悲惨なものでした。
そんな中で注目されるようになったのが共産主義です。共産主義社会では、生産手段(=会社や工場)は資本家のものではありません。みんなのものです(共有)。つまり労働者たちのものです。ですから会社や工場に資本家はいません。全員が労働者です。そして労働者が働いて得た利益はすべて労働者たちに還元されます。みんなで働き、みんなが平等に利益を得る。簡単に言うと、これが共産主義社会です。
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次回は、「『機会の平等』と『結果の平等』」をお届けします。