2022.01.30 17:00
バアルと戦ったエリヤ
岡野 献一
『FAXニュース』で連載した「旧約聖書人物伝」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
ユダヤ教世界においてメシヤが来られる前に再臨すると信じられてきたエリヤ(マラキ書4章5節)。エリヤは不信に陥った北朝イスラエルの信仰を刷新するために神様から遣わされた特別預言者であり、旧約聖書中、モーセと並び称される偉大な預言者です。エリヤの名は「ヤハウェは神である」との意です。
神様の命令に絶対服従
さて、ソロモンの淫乱の罪が内的原因となってソロモンの子レハベアムの時代に王国は北朝イスラエルと南朝ユダに分裂してしまいます。北朝では悪王が続出しますが、王朝分裂から約60年が過ぎたころ、北朝史上で最悪といわれるアハブが王位に就きました。聖書には「(彼は)先にいたすべての者にまさって、主の目の前に悪を行った」(列王紀上16章30節)とあります。実はアハブに悪を行わせた黒幕が王妃イゼベルです。彼女は東地中海沿岸のシドン王の娘で、自分の故国のバアルやアシラ像を国民に拝ませ、それに反対する預言者を次々と殺害していきました。この悪政によって北朝イスラエルの信仰は完全に崩壊し、神の願いから離れてしまいました。
ときに神様の召命を受け、サタン分立のため立ち上がった預言者がエリヤでした。彼はアハブに「わたしの…主は生きておられます。わたしの言葉のないうちは、数年雨も露もないでしょう」(同17章1節)と宣告しました。
その後、エリヤは王の目を避けて川のほとりに潜んでいましたが、飢饉(ききん)が激しくなったとき「シドン…へ行って、そこに住みなさい」という啓示を受けます。シドンは王妃イゼベルの故郷です。敵陣へ乗り込むかのような突如の命令に、普通ならばためらうでしょうが、エリヤは神の命令に絶対服従しました。
飢饉となって3年半が過ぎ、神様の命が再びエリヤに下ります。「行って、あなたの身をアハブに示せ」。エリヤは王と会いバアルとアシラに仕える預言者850人をカルメル山に集めるよう要求します。そして彼は民に対し「わたしはただひとり残った主の預言者です。しかしバアルの預言者は450人…牛を整え…火をつけずにおきましょう。…神の名を呼び…火をもって答える神を神としましょう」(同18章22~24節)と宣言します。エリヤとバアル預言者との対決です。バアル預言者が必死に祈っても駄目なのに、エリヤが祈ると祭壇に火が下りました。民たちはエリヤの信奉する真の神を畏(おそ)れ、バアル預言者850人を滅ぼしました。
「エリヤのように嘆くのではない」
それを知ったイゼベルはエリヤを殺そうと怨念の炎を燃やします。やがて民はイゼベルの圧力に屈し、再びバアルにひざを折るようになりました。エリヤは恐れて逃れ、まるで落人(おちうど)のように荒野をさまよい、神様に死を求めました。エリヤは40日40夜荒野を歩き、ホレブ(シナイ)山に着きます。彼が山上に立つと大風が吹き、地震があり、火が起こりました。孤独なエリヤは神様の姿を見いだそうと必死になりますが、どこにも神様はおられません。やがて静けさの中で神様の細い声を聞きます。「ここで何をしているのか」。エリヤは「私は…主のために非常に熱心でありました。…私だけが残りました」と言って自分の境遇を嘆きます。そこで神様は「バアルにひざをかがめない7千人を残す」と言ってエリヤを励まされました。
聖書に「あなたがたの先祖が迫害しなかった預言者が、ひとりでもいたか」(使徒行伝7章52節)とあるように神様のみ旨を歩む者の道は険しいものです。
真のお父様はご自身の歩まれた生涯路程について次のように語っておられます。
「先生がどれだけたくさんの悪口を言われたり、叩かれたか知っていますか。み旨がなければこのようなことはしません。神様の願いどおりにやってきたら、世の中は先生をさまざまな方法で滅ぼそうとしましたが、今や世の中は全部なくなり、先生だけが残ったのです。これを、自分だけが残ったと、エリヤのように嘆くのではありません。勝利の将軍になって、万国に向かって命令しています」(1995.8.28)と。
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次回は、「師エリヤを超えたエリシャ」をお届けします。