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新 堕落性の構造 11

 現代人に不幸を招来する「心のゆがみ」。そんな悩みの尽きないテーマをズバッと解説! 人間堕落の根源からその原因を究明している一冊です。毎週木曜日配信(予定)でお届けします。

阿部 正寿・著

(光言社・刊『こう解ける! 人生問題~新 堕落性の構造』より)

4 血気怒気について

◉怒りは身を滅ぼす
 怒りで我が身に禍いが降りかかるという例は、生活上枚挙にいとまがないほどです。しかし、それが国家的で歴史的になってくると、事は簡単ではありません。

 日本の終戦間もないころのことです。時の総理大臣、吉田ワンマン氏が、議会で野党某氏をバカヤロー呼ばわりしたとかで、事は紛糾し、衆議院解散にまで及んだことを御記憶の方は多いでしょう。また議会の答弁で、ついムキになり本当のことを言って辞任させられた大臣も数多いのです。

 また、歴史にその例を求めれば、元禄時代、赤穂藩主の浅野長矩(ながのり)(内匠頭<たくみのかみ>)は、自分に赤恥をかかせた憎き吉良上野介(こうずけのすけ)に、ついにガマンの緒が切れて、江戸城、松の間の廊下で忍傷(にんじょう)に及びました。これが日本国民の大好きな赤穂浪士物語となったことは御承知のとおりです。短気で有名な武将、織田信長は、部下の明智光秀が勅使の接待係をしている時に、持ち前のカンシャク玉をぶっつけて、それをメチャメチャにしました。恨みを抱いた光秀により、のちに本能寺で殺されるハメになってしまいました。

 中国や西洋の歴史にも、そういう例は多数あると思うのですが、御存じの方は教えていただきたいと思います。

 次に、聖書の中にもう一つ例を挙げてみましょう。

 旧約聖書に出てくるモーセは、今から4000年前に、イスラエル民族をエジプトの奴隷から解放し、救い出した偉大な指導者でした。彼は、壮丁(そうてい/成年に達した男性)だけで60万人、女子供を含めれば恐らく200万人以上のイスラエル民族を率いて80年間、食べ物一つない砂漠を行進し、カナン(今のパレスチナ地方)に入植しました。その時の苦労が言語に絶するものであることは、聖書を読めば分かります。モーセは卓越した指導者でしたが、ただ一つの欠点は、短気だったことです。

 80年の旅の最後の時、神はメリバという所でモーセに、岩を一度だけ打って水を出しなさいと命じました。ところが、例によって民衆が不信の声を上げて騒いだので、ついカッとなり、岩を二度打ってしまったのです。神はモーセに神の聖なることを現さなかったとして、彼が夢にまで見て、80年間苦労して、カナンと目と鼻の先の所まで来ても、彼にカナンに入ることを許しませんでした。彼は1 20歳にして、ネボ山で死んでしまいました。

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 次回は、「思わぬ方向に運ばれる」をお届けします。


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