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統一王国築いたダビデ

(光言社『FAXニュース』通巻687号[2001年12月15日号]「シリーズ旧約聖書人物伝」より)

岡野 献一

 『FAXニュース』で連載した「旧約聖書人物伝」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。

 ダビデはイスラエル統一王国の第2代王で、信仰心があつく、文武に秀でており、彼が王位にあった時代に国力は最大限に達しました。ダビデの名は「愛すべき者」という意味で、その名が示すとおり、彼は歴史を通じてイスラエル民族から慕われ、マタイ伝の系図ではただ1人「王」と呼ばれ、ヨハネの黙示録ではイエス様が「私はダビデの若枝その子孫」と称されるほどの人物です。

イエス様は「私はダビデの子孫」と称される

 サウル王が神に背いた後、神様はサムエルにユダ族出身の少年ダビデに油を注ぐよう命じました。ダビデが油を注がれた時、彼は野原で父の羊を飼う生活をしていました。彼は熊やライオンが羊の群れを襲う時、それを石投げで幾度も倒すという勇気と手腕を持っていました。

 ダビデは巨人ゴリアテを倒した功績で宮中に召し抱えられ、やがて兵の隊長に任命されます。数々の戦功を立てたダビデは、一躍、国民的英雄となっていきました。

 名声を博すダビデにサウル王は激しく嫉妬し、ダビデを殺害しようと企て始めます。サウルの手を逃れて、ダビデは逃亡生活をするはめになりました。この流浪する苦難の歩みによって、彼の信仰は深められ、民衆の心を深く理解する人格を形成しました。ダビデの詠んだ詩篇の多くはこの苦難時代のもので、試練に遭っても神を信頼し乗り越えようとする信仰心あついものです。

 やがてサウル王が戦死し、ダビデが王として立ち上がる日がやって来ました。彼はまずユダ部族を結集させ、ユダの王として即位します。その後、全イスラエルの王となり、襲いくるペリシテ軍を2度にわたって撃退し、統一王国の基盤を確立していきました。

 さて、ある日の夕暮、ダビデが屋上を歩いていると、美しい婦人が水浴をしている姿を目撃します。すっかり見初めたダビデはその女性を宮中に呼び、一夜を共にしました。その女性は部下である軍人ウリヤの妻バテシバでした。やがてダビデはバテシバが妊娠したことを知り、自分のしたことがウリヤに知られることを恐れ、ウリヤを戦場から引き揚げさせました。妻と過ごすようウリヤに勧めますが、生真面目なウリヤは「戦友が戦っている時、自分だけが休むわけにはいかない」と言ってダビデ王の勧めを断りました。窮したダビデはウリヤを激戦地へ送り、ウリヤは戦死してしまいます。そこでダビデはバテシバを後宮に召し抱えることにしました。

 その時、預言者ナタンがやって来て、ダビデが忠実なウリヤに対して行ったことを厳しくとがめました。ダビデは自分の非道な行いに対して、心から神様の前に悔いました。

▲ゴリアテを倒したダビデ(ギュスターヴ・ドレ画)

バテシバとの子供ソロモンが後継者

 本当ならダビデ王は忠実な部下であるウリヤを殺すべきではありませんでした。ウリヤに寛大な措置を求めるべきだったでしょう。しかし策略をもってウリヤを殺害してしまったのです。これは許されるべきことではありません。やがてバテシバに生まれた子は死んでしまいました。その後バテシバとダビデとの間にはソロモンが誕生しますが、「神はこのソロモンを愛された」(サムエル記下1224節)と聖書には記されています。

 このことについて、真のお父様は次のように語っておられます。

 「ソロモンの母はだれ? バテシバ。バテシバはどういう女性か。ウリヤの妻だ。ダビデ王がウリヤの妻を奪い取った。その子供がいかにしてソロモン王になるか。ウリヤは何かというと、第二の主人だよ。これが堕落もしない前のエデンの園のその位置に再び帰った立場、すなわちダビデはアダムの立場、ウリヤは天使長の立場、天使長の妻は復帰しなければならないエバの立場。天使長がアダムの相対者たるエバを、堕落して引っぱっていった。愛によって占領して、盗んでいった。それを蕩減するには、そういう三角関係に立って元返ししなければならない。そういう原理的基準に立った条件を成した基台の上に生まれた子供は、天の愛の子供として、栄光の子供として生まれる。ソロモンは栄光の子供だ」(1970.10.13)と。

 このみ言のとおりソロモンはダビデの後継者となり、王国は繁栄しました。

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 次回は、「栄華を極めたソロモン」をお届けします。

画像素材:PIXTA