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ペリシテ人と戦ったサムソン

(光言社『FAXニュース』通巻662号[2001年9月10日号]「シリーズ旧約聖書人物伝」より)

岡野 献一

 『FAXニュース』で連載した「旧約聖書人物伝」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。

 士師記中、最も多くのページ数を割いて書かれているのが怪力サムソンの物語です。ギデオンが精兵300人を率いてミデアン人を撃退したのに対して、サムソンはたった1人で強敵ペリシテ人と戦いました。サムソンの名はヘブライ語で「太陽の人」という意味です。

神霊に満ち怪力を持つ

 さて、イスラエルの民は再び不信仰に陥ってペリシテ人の侵略を受け、40年間その圧政に苦しんでいました。そのころペリシテ人の国境近くにサムソンが生まれたのです。信仰深かった両親はサムソンを神にささげ、彼を「ぶどう酒を断ち、かみそりを頭に当てない」(民数記625節)というナジル人として育てました。

 サムソンは大きくなるにつれ、神霊に満ち、怪力を持つようになります。ある日、ペリシテの地テムナを訪れた彼は1人のペリシテ人の娘を見初め、妻にしようと思いました。両親は反対しますが、彼の心は変わりません。実はこの結婚はペリシテ人の圧政からイスラエルを救うための神様のご計画でした。(士師記144節)

 サムソンが再びテムナに行くと突然ライオンが襲い掛かってきました。しかし神霊に満ちた彼は素手でライオンを倒します。数日後、サムソンがその場所を通ると、ライオンの死骸に蜂が巣をつくり、そこに蜜がたまっていました。彼はその蜜をかき集めて食べ、そのことを誰にも話さずにいました。

ペリシテ人の脅しに屈した妻

 娘と結婚したサムソンは、花婿の習わしどおり娘の家に人々を集め祝宴を設けました。その席で彼はなぞなぞを出します。「食らう者から食い物が出、強い者から甘い物が出た。7日以内に解いた者に晴れ着をあげよう」。誰も謎を解く者がいません。そこでペリシテ人たちはサムソンの妻に「答えを聞き出せ。さもないと父の家を焼き払う」と脅迫しました。脅された妻は泣きながらサムソンに迫り、ついに答えを聞き出しペリシテ人に伝えたのです。約束の期限内にペリシテ人が「食らう者はライオンで、甘い物とは蜜だ」と答えたので、サムソンは「私の雌牛が手伝わなかったら、謎は解けなかった」と言い返しました。

 本当なら、雌牛としての妻は、太陽の人サムソンを支えなければならなかったのですが、しかしペリシテ人の脅しに屈して支えきれなかったのです。妻の協助は極めて重要なのです。

 妻が脅迫されたことを知ったサムソンは別のペリシテの町を襲いますが、ペリシテ人はその仕返しに妻と義父を殺害しました。怒ったサムソンはさらに大勢のペリシテ人を倒しますが、今度はペリシテ人は軍隊をさし向けてイスラエルを襲ってきました。恐れたイスラエルはサムソンを縛り上げ敵に引き渡します。しかし神霊に満たされたサムソンは、縛った綱をいとも簡単に振りほどき、たった1人でペリシテの軍隊を打ち倒してしまったのでした。士師サムソンの怪力を恐れたペリシテ人は、その後20年間イスラエルを襲うことをやめました。

▲サムソンとデリラ(ギュスターヴ・ドレ画)

デリラに髪を切られ力が失せる

 さて、サムソンはデリラというペリシテの女を愛するようになります。デリラとはヘブライ語で「色っぽい女」という意味です。ある日ペリシテ人はサムソンの怪力の秘密を聞き出すようデリラを唆しました。デリラはサムソンを誘惑し、執拗(しつよう)にその秘密を聞き出そうとしますが、彼はなかなか打ち明けません。しかし遂に女の甘い誘惑に負けて彼は秘密を教えました。

 「私はナジル人で、髪の毛をそり落とせば力が去ってしまう」。デリラは自分の膝の上にサムソンを眠らせ、髪の毛をそり落としてしまいました。弱くなったサムソンはペリシテ人に捕らえられ、両眼をえぐられ、獄屋に入れられます。彼は神に選ばれていたにもかかわらず、女の誘惑に負け、髪をそってはならないというみ言に不忠実となり、罪を犯して神に捨てられてしまったのです。彼はかつての栄光を失い、全く惨めな状態となりました。

 しかしそのどん底の状態にあっても、彼が心から悔い改めて神に祈り求めた時、神はその祈りを聞かれ、もう一度彼を強くされました。彼はペリシテの神殿を怪力で打ち倒し、3000人のペリシテ人と共に自らの命を絶ったのです。

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 次回は、「精誠の女性、ルツ」をお届けします。

画像素材:PIXTA