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「性解放理論」を超えて(11)
心の構造①

 人類は今、神とサタンの総力戦の中に生きています。
 「統一思想」すなわち「神主義」「頭翼思想」によって生きるのか、神の言(ことば)を否定する思想を選択するのか…。
 台頭する性解放理論を克服し、神の創造理想と真の家庭理想実現のための思想的覚醒を促す「『性解放理論』を超えて」を毎週月曜日(予定)にお届けします。

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大谷明史・著

(光言社・刊『「性解放理論」を超えて』より)

二 フロイトを超えて

 フロイトの思想の要点と、それに対する「統一思想」の見解を述べます。

(三)心の構造①

 フロイトによれば、人間の心は本来イド(id、エスEsとも言う)です。イドは無秩序で混沌(こんとん)としており、規律を無視して、ひたすら快感を求めます。イドのみの人間は動物的な存在です。イド(エス)の中からエゴ(ego、自我)が生じます。エゴはイドの周辺にある文明化された心です。

 イドは盲目的な、動物的要求が宿っている所であり、人間精神の原始的な場所であり、暗いジャングルです。アンソニー・ストー(Anthony Storr)によれば、「エス[イド]は原始的で、明確な構成をもっておらず、情動的であり、“非論理的なものの世界”である。エスとは、われわれの人格の、暗い、近寄りがたい部分である(※7)」。

▲フロイトの分析した心の構造

 さらに人間の心を根底から揺り動かしているのはリビドー(libido)という性的エネルギーであり、イド(エス)は「リビドーの巨大な貯蔵庫(※8)」になっているのです。つまり、イド(エス)の中からリビドーが泉のように湧き出るということであり、アンソニー・ストーが言うように、フロイトにおいて、「性欲こそ人間のもっとも重要な駆動力(※9)」なのです。フロイトの分析した心の構造を図示すれば上のようになります。

 後に、フロイトの弟子の中から、人間は本来、性的存在であり、性を抑圧するから神経症になるのであって、性を解放することによって、人間は本来の姿に戻るという、フロイト左派の性解放理論が生まれました。

 しかし、イド(リビドー)を解放した人間は野生の動物的存在でしかあり得ません。野生の動物は勝手に異性と関係をもち、性のために闘い、殺し合ったりします。フロイトは人間がそのような野蛮な状態になることを恐れたのです。そこでフロイトは、イドからエゴ(自我)が生まれてくるとして、人間は自らエゴによってイドをコントロールすべきであると主張しました。

●われわれ、すべての人間のなかに野蛮人[イド]がいる(※10)。
●自分の中に荒れ狂っている強い衝動[イド]を操る力[エゴ]を発展させねばならない(※11)。

 フロイトはイドとエゴの関係を暴れ馬と騎手の関係にたとえています。熟練した騎手によって、暴れ馬をよく操れば、馬は素直に騎手に従うようになると言うのです。イドは心の中のオオカミと言うこともできます。オオカミが暴れないように抑えなさいと言うことです。

 フロイトによれば、偉大な人とは、内部に大量に蓄積している野蛮な衝動を飼いならし、方向づけ、上昇させる力と意志を発達させた者です。ラッシェル・ベイカーは次のように言います。

 野蛮な衝動と人間の文明化された意志の間の闘争のうちに、ジャングルと開拓地の激しい戦いのうちに、フロイトは人生における、すべての成功と失敗の理由、文明のすべての創造的な仕事の源泉、すべての犯罪、すべての病気の原因があると考えたのである(※12)。

▲超エゴによる監視

 フロイトはさらに、エゴの一部に裁判官の役割をする場所があるのであり、それを「超エゴ」(超自我)と呼びました。超エゴとは、「~してはいけない」と命令する裁判官のような内面の権威です。超エゴは両親、特に父親からの叱責、キリスト教をはじめとする宗教の戒律に由来するものです。そして上図のように、超エゴがエゴを監視し、エゴがイドを抑圧、コントロールしていると言うのです。

 フロイトにおいて、エゴの役割は、イド(リビドー)というジャングルの猛獣が暴れないように「檻(おり)に入れること」または「柵で仕切ること」です。ジャングルの猛獣はどう猛で危険ですが、檻の中に閉じ込めたり、柵で仕切ることによっておとなしくなります。それと同じように、エゴによってイドを抑えることによって、動物的な人間が文明的な人間になると言うのです。

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※7 アンソニー・ストー、鈴木晶(あきら)訳『フロイト』講談社、1994(78-79)
※8 デイヴィッド・コーエン、加藤健二訳『心と脳』河出書房新社、1998(41)
※9 アンソニー・ストー『フロイト』(124)
※10 ラッシェル・ベイカー『フロイト・その思想と生涯』(199)
※11 同上、(198)
※12 同上、(197)

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 次回は、「心の構造②」をお届けします。


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