2021.12.06 22:00
「性解放理論」を超えて(10)
エディプス・コンプレックス
人類は今、神とサタンの総力戦の中に生きています。
「統一思想」すなわち「神主義」「頭翼思想」によって生きるのか、神の言(ことば)を否定する思想を選択するのか…。
台頭する性解放理論を克服し、神の創造理想と真の家庭理想実現のための思想的覚醒を促す「『性解放理論』を超えて」を毎週月曜日(予定)にお届けします。
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大谷明史・著
二 フロイトを超えて
フロイトの思想の要点と、それに対する「統一思想」の見解を述べます。
(二)エディプス・コンプレックス
フロイトは、母親に恋し父親を嫉妬する幼児のエディプス・コンプレックス(Oedipus complex)が、あらゆる神経症の核心にあると説きました。子供が異性の親と結びついたままで、エディプス・コンプレックスに打ち克つことができない時に精神的疾患が起こる、というのが彼の考えでした。エディプス・コンプレックスについて、エーリッヒ・フロム(Erich Fromm)は次のように説明しています。
フロイトの言うエディプス・コンプレックスの意味は容易に理解できる。男の子はたとえば四歳ないし五歳という早い年齢に性的志向が目覚めるので、母親に対して強い性的付着と欲求をつのらせる。彼は母親を欲し、父親は彼のライバルとなる。彼は父親への敵意をつのらせ、父親に取って代わること、そして結局は父親を殺すことを欲する。父親をライバルと感じるために、男の子はそのライバルたる父親によって去勢されることを恐れる(※4)。
フロイトの言うエディプス・コンプレックスとは、次のようなギリシア神話のエディプス王の物語に基づいたものです。
テーベ(Thebes)の王レイアス(Laius)と王妃ジョカスタ(Jocasta)に、ある予言者が不吉な予言をした。“あなたの子どもは成人して後、その父を殺し、その母をめとるであろう!” 子どもは生まれるとすぐに足を突きさされ、山中に捨てられ、死を待った。羊飼いが子どもを助け、子どもは他の国の王と王妃の息子(エディプス)として成長した。……エディプスは道中で見知らぬ男──実はレイアス王──に出会い、口論のはてに男を殺してしまった。エディプスはテーベにたどりついた。街は、謎かけをして謎に答えられない者を食べてしまう怪物、スフィンクスの恐怖におびえていた。“朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足、この動物の名は何ぞや?”“それは人間なり。幼きときは四本の足にて這い、成長したるのちには二本の足にて直立し、老いたれば杖でからだを支えるものなり。” スフィンクスは敗れて海に身を投じた。エディプスはテーベの王となり、ジョカスタの夫となった。……エディプスは知らずにおかした自分の罪を知り、自分の両目を突いた。ジョカスタは自ら命を絶った(※5)。
フロイトは、幼児がエディプス・コンプレックスを解消できずに成長すると、リビドーの正常な発展に障害をもたらして、それが神経症の発症に大きく関わってくると考えたのです。
フロイトはギリシア神話に基づいて、幼い男の子は、母親に対して性的な関心を抱き、母親を独占したいと願い、そのために父親に対して憎しみの衝動を抱くと言います。これが男の子のエディプス・コンプレックスです。他方、女の子は男性性器のない母親に幻滅し、母親を憎み、父親に愛情を向けるようになります。これが女の子のエディプス・コンプレックスです。
「統一思想」から見るとき、エディプス・コンプレックスとは、子女が父母を愛する子女の愛に、ゆがんだ性愛を混入させたことから生じたものであり、心の中の暗闇に焦点を当てたものです。本来、父母が子女を愛する愛も、子女が父母を愛する愛も、兄弟姉妹の愛も、性愛とは無関係なものです。しかるに人間始祖アダム・エバの堕落によって、堕落した男女の愛が、愛全体の中に混入するようになったのです。その結果、エディプス・コンプレックスのようなものも生まれたのです。ギリシア神話に基づいて、フロイトは堕落した愛、ゆがんだ愛を見つめたのです。
エーリッヒ・フロムも「フロイトが誤っていた点、また彼の前提のゆえに誤らざるをえなかった点は、母親への付着を、本質的に性的性質を持ったものと理解したことである(※6)」と述べています。
神経症はエディプス・コンプレックスが解消されなかったから生じるのではありません。幼児期からの愛の傷が心の中に残っていて、その傷を受けた心理状態に退行することによって生じるのです。さらに、幼児期のみならず、先祖からの影響もあるのです。
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※4 エーリッヒ・フロム、佐野哲郎(てつろう)訳『フロイトを超えて』紀伊國屋書店、1980(46-47)
※5 リチャード・アッピグナネッセイ(Richard Appignanesi)、加瀬亮志(りょうじ)訳『フロイト』現代書館、1980(56-59)
※6 エーリッヒ・フロム『フロイトを超えて』(49)
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次回は、「心の構造①」をお届けします。