2021.11.29 22:00
「性解放理論」を超えて(9)
性的外傷説から心的外傷説へ②
人類は今、神とサタンの総力戦の中に生きています。
「統一思想」すなわち「神主義」「頭翼思想」によって生きるのか、神の言(ことば)を否定する思想を選択するのか…。
台頭する性解放理論を克服し、神の創造理想と真の家庭理想実現のための思想的覚醒を促す「『性解放理論』を超えて」を毎週月曜日(予定)にお届けします。
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大谷明史・著
二 フロイトを超えて
フロイトの思想の要点と、それに対する「統一思想」の見解を述べます。
(一)性的外傷説から心的外傷説へ②
フロイトは初め、神経症の原因を幼児期における性的虐待によるものと見て、性的外傷説を唱えました。しかし、必ずしもそうでないことを悟り、後に、幼児にも性欲があり、それは年代とともに変化していくという幼児性欲説を主張するようになりました。そして人間の心を根底から動かしている性的エネルギーであるリビドーが、過去のある時期において阻止され、傷つけられた体験──心的外傷(トラウマ)──によって、リビドーの固着があった場合、後に何らかの偶発的な外傷的体験によって、その過去のリビドーの固着点に無意識に退行して起きる現象が神経症であると説きました。
しかし「統一思想」から見れば、人間を根底から動かしているのは性的エネルギーではなく、心情─愛したい、愛されたいという衝動─です。したがって、人間の心の傷となって神経症を引き起こしている本質的なものは、幼児期の心的外傷によるリビドーの固着ではなく、心情の傷であり、愛の傷なのです。心的外傷も、もちろん傷の一部をなしていますが、それが全てではありません。より根本的には愛の傷なのです。すなわち父母から、兄弟姉妹から、あるいは周囲の人たちから冷たくされたり、虐待されたり、あるいは人々の期待に応えられなくて挫折したことによる愛の傷が原因なのです。
さらに心理的な問題は、幼児期の体験のみならず、霊界の先祖まで遡ります。すなわち、われわれの心の傷は、幼児期の心の傷のみならず、先祖たちの心の傷(悲しみ、怨〈うら〉み、憎しみなど)も加わっているのです。なお先祖たちの心の傷には、他人から受けた傷と他人に与えた傷があります。他人に与えた傷は、傷を受けた人の怨念となって、傷を与えた人の地上の子孫に振りかかっているのです。したがって心の病気の解決は、個人の幼児期からの精神的な治療だけでは不十分であり、霊界まで遡って先祖たちの心の傷を解決することまでなされなくてはならないのです。
カール・グスタフ・ユング(Carl Gustav Jung)は、個人の意識の下には個人的無意識(各人独自の経験に由来する抑圧された記憶や欲望)が横たわっているが、さらに深いところに集団的無意識(われわれの先祖から相続した記憶や行動パターン)があると考えています。そのようなユングの見解は「統一思想」の見解を裏づけるものと言えます。
心の傷を癒やすのは真(まこと)の愛ですが、愛によって幼児期からの心の傷を癒やすのみならず、霊的に先祖の心の傷を癒やしていくことも必要です。ここに宗教的な先祖の供養とか、先祖の解怨の意義があります。しかしながら、心理的な治療のみならず、生理学的治療も必要です。すなわち、性相的には霊界の先祖解怨と精神療法を行いながら、形状的には最先端の現代医学による生理学的治療もなされなくてはならないのです。
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次回は、「エディプス・コンプレックス」をお届けします。