2021.11.15 22:00
「性解放理論」を超えて(7)
ダーウィニズム/フロイト主義/フロイト左派
人類は今、神とサタンの総力戦の中に生きています。
「統一思想」すなわち「神主義」「頭翼思想」によって生きるのか、神の言(ことば)を否定する思想を選択するのか…。
台頭する性解放理論を克服し、神の創造理想と真の家庭理想実現のための思想的覚醒を促す「『性解放理論』を超えて」を毎週月曜日(予定)にお届けします。
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大谷明史・著
一 性解放理論の台頭
(二)性解放理論の展開
(3)ダーウィニズム
ダーウィンはクジャクの雄の美しい尾羽がいかなる自然選択によって生じたのか説明ができなくて心を悩ませました。そこで彼は性選択(雌雄選択)という概念をもち出したのです。すなわち、より美しい尾羽をもっている雄は雌に選ばれて繁殖行為に及ぶことができたが、みすぼらしい尾羽をもっている雄は、雌に無視されて繁殖行為にあずかれずに淘汰(とうた)された。そして、そのような性選択の結果、次第に雄の美しい尾羽が進化したのだと言うのです。
性選択とは、雌は強くて美しい雄を選ぶということであり、雄同士は雌を奪い合って闘うということです。そのような性選択をよく表現している例が、ゾウアザラシのハーレムであり、女王バチと交尾する選ばれた一匹の雄バチ(他の多くの雄バチは殺されてしまう)などです。そのようなダーウィンの言う性選択の世界からは、人間社会における一夫一婦制を中心とした倫理というものは決して生まれるはずがありません。生存競争を通じて猿が人間になったと言う進化論から見るならば、人間社会においても、競争的、闘争的なフリーセックス社会にならざるを得ないのです。
(4)フロイト主義
19世紀において、性を罪悪視するキリスト教道徳が、絶対的な権威をもってヨーロッパの人々の心を支配していました。フロイトは医学者を志していましたが、当時、ヒステリー(神経症の一例)と呼ばれた不思議な病気がありました。ヒステリーとは、身体にはどこにも異常がないのに、眼(め)が見えない、耳が聞こえない、口がきけない、立てない、歩けない、感覚がなくなるなどの症状を示す病的状態でした。そのようなヒステリーの患者に対して、一部の医学者たちによって、催眠術を用いてその原因を探る試みがなされていました。その結果、それらは一様に、性的なフラストレーションや過去の幼児期における、いまわしい性的な体験に関係していることが明らかになってきました。しかし性を悪しきもの、恥ずべきものとするキリスト教の性道徳のもとで、医学界では誰もその見解を公表しませんでした。そのタブーに挑んだのがフロイトです。
フロイトは催眠術に頼らないで、「自由連想法」、「夢判断」によって、患者の心の奥底にあるものを引き出していく精神分析の方法を探究していきました。自由連想法とは、患者の意識に浮かぶ事柄を自由に発言させながら、抑圧の原因となっているものを見いだそうとする方法であり、夢判断とは、夢の中味を述べさせることによって、抑圧の原因を発見しようとする方法でした。
人間を根底から動かしているのは性的な衝動であるが、幼児期の性的虐待や結婚生活における性的フラストレーションなどによって、心の奥深くに傷が生じている。しかし性を罪悪視するキリスト教道徳のもとで、患者はその心の傷を忘れようとして、その記憶を意識の外に追い出してしまう。それがフロイトの言う「抑圧」(repression)です。そしてこのような抑圧された心の傷が表面化することによって神経症などの症状が生じていると、フロイトは結論を下したのです。当時のキリスト教は、性を罪であると断罪していました。ところがそのようなキリスト教社会において、隠れたところでは性的な欲望をこっそりと満たすという偽善や性犯罪が横行していました。患者たちはそのような封建的道徳の被害者であるとフロイトは考え、そのような封建的道徳に対して反旗を翻したのです。そしてフロイトは、精神分析によって性的な抑圧の事実を明らかにすれば、患者の神経症は治ると考えたのです。
(5)フロイト左派
ところが精神分析だけでは、何ら解決にはならないと言うのがライヒやマルクーゼなどのフロイト左派でした。彼らは、性の抑圧そのものを取り除かなければならないと主張し、性の解放を叫びました。人間を根底から動かしているのは性的エネルギーであり、それが抑圧されることによって神経症が生じると言うフロイトの当初の出発点から見れば、フロイト左派の結論は当然の成り行きでした。このようなフロイトを元祖とするフロイト左派の性解放理論と、マルクス主義、ダーウィニズムに基づいた唯物論的思潮のもとで、今日のフリーセックス時代がもたらされたのです。
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次回は、「性的外傷説から心的外傷説へ①」をお届けします。