2021.11.14 17:00
ユダとタマルで胎中聖別
岡野 献一
『FAXニュース』で連載した「旧約聖書人物伝」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
ヤコブが40歳にしてエサウを自然屈伏させ、長子権を完全復帰した勝利の基台の上で、ユダとタマルとの間において「胎中聖別」の摂理が展開しました。
長子権復帰勝利の上、跡継ぎを残したい
ユダは、正妻レアが生んだヤコブの4番目の息子で、レアが「わたしは今、主をほめたたえる」(創世記29章35節)と述べているように、レアの心に神様を賛美する心情が芽生えた時に生まれた息子でした。
ユダは、兄弟たちが父の最愛の子ヨセフを殺そうとした時「弟を殺してはいけない」と言ってヨセフの命を助けました。またヨセフがエジプトへ売られた後、父はその弟ベニヤミンを愛しますが、ユダはベニヤミンへも深い愛情を寄せています(創世記44章33節)。ユダは父やラケルの子(弟)を優しく気遣う性格でした。
ユダは一時期、他の兄弟たちと離れて暮らしますが、その理由は、おそらく父がヨセフのために嘆く姿を間近で見るのがとても忍びなかったこと、さらには弟ヨセフの命を助けるのが精いっぱいで、エジプトへ売り飛ばしてしまったという自責の念が強くあったためでしょう。
さてユダは、カナン人シュアの娘バテシュアを妻に迎え、エル、オナン、シラという3人の息子をもうけました。長男エルが成人した時嫁タマルを迎えましたが、エルは子を残さずに死んでしまいました。レビラート婚という当時の慣例に従い、ユダは次男オナンに兄嫁タマルとの間に子をもうけるよう命じましたが、彼は子が自分のものにならないので、精を地に漏らしました。それが神の前に罪となってオナンも死んでしまいました。
本来なら、タマルは三男シラによって子を得なければならないはずですが、ユダはシラを嫁タマルに与えればシラも死んでしまうかもしれないと恐れ、タマルに「シラが成人するまで…あなたの父の家にいなさい」と口実をもうけ、実家へ送り返してしまいました。
歳月が流れ、ユダの妻バテシュアも死に、その喪の日が明けた時のことです。シラが成人したのに、妻に迎えてもらえないのを知ったタマルは、ユダが近く街道を通ることを伝え聞くと、遊女に変装し、街の入り口に座ってユダが来るのを待ちました。彼女は、今は独り身でいる義父ユダによって跡継ぎを得ようと一計を案じたのです。
長子と次子が分立され、胎中復帰
遊女に扮(ふん)したタマルは義父ユダと関係した時、そのしるしとして印と紐と杖をもらい受けます。それは子を宿した時、父が誰であるのかはっきりさせ、死の刑罰から身を守るためでした。タマルはユダの血統を残すために命懸けの行動に出たのです。案の定、タマルに姦淫の嫌疑がかけられ、命の危険にさらされた時、彼女はしるしを見せて何とか一命を取り止めたのでした。
タマルは双子を宿していました。出産の時、兄ゼラが手を出したので、産婆は「これが先に出た」と言って緋(ひ)の糸を手に結びました。ところが兄は手を引っ込め、代わりに弟ペレヅが先に生まれたのです。
文鮮明先生はそのことについて次のように述べています。
「サタンの偽りの愛の種が、エバの胎中にまかれて悪の生命が生まれたので、神様も母の胎中まで入っていって分別しなければ、天の息子が…誕生することができないのです。…ヤコブの勝利によっても、まだ分別されていない妊娠から40歳までの期間も、サタン分立しなければなりません。結果的にこの責任を引き受けた偉大な母が、タマルです。タマルは、ユダの長男のエルと結婚しましたが、エルは…死んでしまいました。…オナンも死んで…タマルは…3番目の息子のシラと一緒になろうとしましたが、ユダはシラをタマルに与えませんでした。
…タマルは、選民の血統を残さなければならないという一念から…ユダを迎え、双子を身ごもりました。その子たちが生まれるとき、先に…出ようとした長子…が再び胎中に入り、弟になるべき次子の赤ん坊が兄になって先に生まれたのですが、それがペレヅです。タマルの胎中で長子と次子が争って分立され、胎中復帰がなされたのです」と(1996.4.16)。
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次回は、「ヨセフと、彼を奴隷に売った兄弟たち」をお届けします。
画像素材:PIXTA