2021.11.01 22:00
「性解放理論」を超えて(5)
マルクス主義①
人類は今、神とサタンの総力戦の中に生きています。
「統一思想」すなわち「神主義」「頭翼思想」によって生きるのか、神の言(ことば)を否定する思想を選択するのか…。
台頭する性解放理論を克服し、神の創造理想と真の家庭理想実現のための思想的覚醒を促す「『性解放理論』を超えて」を毎週月曜日(予定)にお届けします。
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大谷明史・著
一 性解放理論の台頭
(二)性解放理論の展開
(2)マルクス主義①
マルクスは、原始状態の社会は自由で平等であり、全てが共存であり、互いに助け合う社会であり、そこには人が人を支配するとか、人が人から搾取するというようなことはなかったと見ました。マルクスの良き協力者であったフリードリッヒ・エンゲルス(Friedrich Engels)は『家族、私有財産および国家の起源』において、アメリカの進歩的な人類学者モルガンの説を引用しながら(マルクスもモルガンの研究を高く評価していました)、次のように述べています。
原始の状態において男女の関係は全く規律のない自由なものであった。すなわち多妻制、多夫制の社会であって、「あらゆる女があらゆる男に、またあらゆる男があらゆる女に、一様に属していた(※1)」と言います。つまり原始共産主義社会において、部族内での男女の性関係は、何の制限もない「無規律性交」の状態であった。そのように「禁制の障壁が、かつてはおこなわれていなかった(※2)」と言うのです。それは正にフリーセックスにほかなりません。それでは、そのようなフリーセックスの原始状態から、いかにして一夫一婦制の家族制度が成立したのでしょうか。
エンゲルスによれば、集団婚の原始共産主義社会は母権制でした。それは無規律性交の社会では、子供の父が誰であるかは確かでないが、その母が誰であるかは確かであったからです。そのような母権制のもとでは、子供は父の氏族に属していないため、父は財産を我が子に相続させることができませんでした。ところが富が家族の私有となり、増大するにつれて、富の生産に直接従事する男が、家族内で女よりも重要な位置を占めるようになりました。その結果、母権が覆されることになったのです。母権の転覆とともに、無規律性交の社会は崩壊し、夫が妻を支配する一夫一婦制の家族制度が現れることになったと言います。それは自分の財産を、確かに自分の子供に相続させるという、経済的な条件から生まれたものであり、「男の支配のうえに築かれた(※3)」ものであったと言うのです。
それでは階級社会において成立した一夫一婦制の結婚は、共産主義社会においてはどうなるのでしょうか。それに対してエンゲルスは、「[一夫一婦制は]消滅するどころか、かえってはじめて完全に実現されるであろう(※4)」と言い、共産主義社会では、「相互の愛着以外には、まさにどんな動機も、もう残らない(※5)」ような婚姻、つまり愛のみに基づいた結婚となると言います。しかし、それは何の裏づけもない空約束にすぎないのです。マルクス主義には、純潔や一夫一婦制の理論的根拠はありません。理論的には性解放であって、結局は性解放へと向かわざるを得ないのです。実際、マルクスとエンゲルスは『共産党宣言』において、次のように述べています。
家族の廃止! もっとも急進的な人々さえ、共産主義者のこの恥ずべき意図に対しては、激怒する。……共産主義者のいわゆる公認の婦人共有におどろきさわぐ、我がブルジョアの道徳家振りほど笑うべきものはまたとない。……共産主義者は偽善的に内密にした婦人の共有の代わりに、公認の、公然たる婦人の共有をとり入れようとする、とでもいったらよかろう(※6)。
これはブルジョア的な関係から生じる「偽善的な婦人の共有」は消滅し、共産主義的な「公認の婦人の共有」になるということ、すなわち一夫一婦制の廃止とフリーセックスを公然と宣言するような発言です。
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※1 フリードリッヒ・エンゲルス、村井康男他訳『家族、私有財産および国家の起源』大月書店=国民文庫、1954(39~40)
※2 同上(45)
※3 同上(79)
※4 同上(97)
※5 同上(105)
※6 マルクス=エンゲルス、大内兵衛(ひょうえ)・向坂逸郎(さきさか・いつろう)訳『共産党宣言』岩波書店=岩波文庫、1971(63~65)
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次回は、「マルクス主義②」をお届けします。