夫婦愛を育む 167
見せている顔が違う

ナビゲーター:橘 幸世

 少人数で教えている今年の塾の高2女子は、かつてないほど“かしまし”く、教える側はその分エネルギーを要します。皆いい子で憎めない子たちなのですが、「この先生は怒らない」となれば自由そのもの。ちょっとの合間にもおしゃべりを始めかねません。

 ある子は「先生、○○君て本当に格好いいの。告白したんだ」と言ってきます。他の子たちは続きに興味津々。
 「はいはい、いい子で勉強したらご褒美あげる」と取りあえず問題を解かせ、時間が余れば「じゃあ、約束のご褒美。話の続きをしていいよ、ただし英語でね」と英会話レッスンへの切り替えです。「え~っ」と言いつつも一生懸命英語で伝えようとする彼女。

 後日、「先生に報告しなきゃ」と○○君とのその後を言ってきました。もうちょっと勉強を頑張ってほしいので、漫画『エースをねらえ!』のエピソード(感情に流されないよう人間的に成長するまで待てとコーチが指導)を話そうと思うのですが、いかんせん、ジェネレーション・ギャップ。彼女たちは漫画自体を知らないので諦めました(一部のファンは“哲学書”と呼ぶ漫画です)。

 彼女たち、学校ではどんなふうにしているのだろうと思わずにはいられません(怖い先生の授業では大人しくしているのでしょう)。

 かつて高校で講師をしていた時は、ここまで開けっぴろげな生徒の姿に接することはありませんでした。
 休憩時間には、愚痴も聞けば、怖い体験の話も聞きます。「生徒会長のSNSに批判のコメントが寄せられていてかわいそう」など、今時ならではの話も耳に入ります。

 わが子が高校生の時、学校での姿はどんなだったか、ある程度想像はつくものの、親の知らない姿もたくさんあったのでしょう。

 ふと、息子の小学生時代を思い出しました。3年生くらいだったと思いますが、授業参観に行った際、廊下で担任の先生と話す機会がありました。

 「いやあ、彼は真面目で固すぎてちょっと心配しています」との先生の言葉にあぜんとする私です。
 「え?! 家ではおちゃらけ過ぎて心配していますけど」との私の返答に、今度は先生があぜんとしました。

 真逆のイメージを担任と親が持っていたのです。

 そんなに違う顔を見せているのか、とわが子の別の側面を知った瞬間でした。どちらも本当の彼なのでしょう(家ではいい子で学校ではわがまま、という逆パターンの方が、家族に素の自分を出せないので問題、とは聞きますが…)。

 その場に応じて、ベストの自分を出そうと頑張っている一人一人です。家ではだらしないようでも、外ではリーダーシップを発揮している人もいますね。
 全ての(例えば、格好いい)側面は見られなくても、家では多少わがままでも、頑張らなくていい、くつろげる場を提供できる自分でありたいと思います。

 普段は見ることのできない側面を何かの機会に見ることができた時は、「ラッキー」と巡り合わせに感謝して。

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