夫婦愛を育む 166
無意識のうちに夫と競争していました

ナビゲーター:橘 幸世

 「無意識のうちに夫と競争していました」
 女性向けの夫婦講座に来られたかたたちの感想文にしばしば見受けられたコメントです。

 教育現場では男女共同参画、ジェンダーフリーが長年にわたって熱心に謳(うた)われ、世間でも女性の社会進出、地位向上も強く推奨されています。

 ジェンダーフリーは、男女それぞれの本性の相違(別の惑星から来た者同士と例える専門家もいるほど大きな相違)を無視して、外的に全て同じにしようとする傾向があるのではと、感じています。

 そんな“平等”が関係性にプラスとなっているのでしょうか。

 平等・対等を謳えば、それが尺度となり、それを要求します。
 夫婦間でも、仕事・家事育児分担を対等にすべきと思えば、「私の方がやっている」と相手に不満を覚えたり、「負担を多くかけて申し訳ない」と自分を低く評価したりしかねません。
 そんな価値観のもとで「無意識に夫と競争している」女性が増えているのかもしれません。それは当然、夫婦仲にはマイナスですし、愛が育つ妨げとなるでしょう。

 コロナ禍のオリンピックにあって日々感動をもらっていますが、インタビューに答える選手たちの口から、今回はいつにも増して「感謝」の言葉が発せられています。

 スポットライトが当たる選手一人の背後には、食事や体調管理、データ分析などの多くのスタッフがいることでしょう。それぞれが自分の役割分担を全うすることで選手が結果を出し、スタッフはチームの一員として喜びや達成感を共有します。

 同様のことが夫婦間でも自然にできたらと願います。男女それぞれの本性に根差した役割分担を各自が受け止め果たしつつ、相手に感謝し合う日々を重ねることで、とても穏やかで居心地の良い家庭になるでしょう。

 実際、受けてきた教育や世の風潮にもかかわらず、夫婦の役割分担の講座を聞いて反発した女性はほとんど見受けられませんでした。反省しつつも、納得し喜んでいた人が大半です。
 「自立して一人前」と教えられ、無理して頑張ってきた女性が、「頼っていいんだ」と知って楽になったと書いていました。

 人との関わりの中で生きていく限り、自立が成長の終着点ではありません。
 チャック・スペザーノ博士の著書『傷つくなら、それは愛ではない』には、こうあります。

 我々の文化では、成長の最終段階は自立であると教えられてきた。しかし本当は、自立は真のパートナーシップへの前段階、即ち相互依存への前段階にすぎない。相互依存へ移行するには、それまでとは全く違う生き方の指針を進んで取り入れなければならない。自立の段階では非常に上手く機能していたやり方が、かえって相互依存に向かう上で障害になる。…自立の段階では、(他者からの助け等を)受け取ろうとしないから、リフレッシュして力を回復することができず、疲弊し嫌気がさす。
 “受け取る”という行為が、我々を育み、進み続けるためのエネルギーを与えてくれる。我々の中の女性性(受け取る)が大切にされるにつれ、我々の中の男性性(与える)とバランスが取れるようになり、関係性が機能するようになる。
 自立の本質、……それは競争性である。(一部中略・補足)

 健全な授受作用ができなければ、疲れて力は出ませんね。信頼〈信じて頼る〉に根差した相互依存、助け合って仲良く生きていくすべを学んでいきたいものです。

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