2021.04.05 17:00
コラム・週刊Blessed Life 162
ソウル、釜山の市長選挙は大統領選挙の前哨戦!
新海 一朗(コラムニスト)
韓国では、4月7日にソウル市と釜山(プサン)市の両都市で市長選挙が行われます。
この二つの選挙が注目される理由は、2022年3月に行われる韓国大統領選挙の前哨戦と見られているからです。
ソウル市長選挙は、野党「国民の力」から呉世勲(オ・セフン)候補、与党「共に民主党」から朴映宣(パク・ヨンソン)候補が対決する構図になっています。
3月31日付の「リアルメーター」の世論調査では、呉候補が55.8%、朴候補が32.0%の支持率で、野党の呉候補が優勢です。
もう一つの釜山市長選挙は、野党「国民の力」から朴亨埈(パク・ヒョンジュン)候補、与党「共に民主党」から金栄春(キム・ヨンチュン)候補が争っていますが、同世論調査によると、朴候補が51.1%、金候補が32.1%で、こちらも野党の朴候補が優勢となっています。
韓国を代表する二大都市での市長選挙において、与党の候補が劣勢に立たされ、野党の候補が優勢に立っているという事実は、現在の文在寅(ムン・ジェイン)政権が犯したさまざまな失策、とりわけ不動産投機を巡る不正疑惑などが国民の怒りと不信感を募らせているからです。
文在寅大統領を支持するかどうかの世論調査では、過去最低の34.1%という支持率であり、不支持率が62.2%に上っています。
これでは、与党の候補に逆風が吹くのは当たり前で、大票田のソウル、釜山の二大都市で、野党候補の市長が誕生すれば、来年の大統領選挙に大きな影響が出るのは必至です。二つとも野党候補が勝つ見込みが高いという現状です。
文在寅政権は、これまで24回もの不動産政策を打ち出しました。しかしいずれも効果なく、失敗に終わっています。その理由は、不動産に関わる税金を引き上げることで、不動産の需要を抑える政策を採ってきたこと、それに対して、不動産の供給を増やす政策が全く採られていないとの批判が続いたことです。
25回目となった今年2月の新政策は、公共機関による再開発事業で、供給拡大を図ることを目指しているといわれますが、果たしてその政策が功を奏するかどうか疑問視されています。
なぜ、不動産を買いまくる風潮ができているかと言えば、結局、投資目的です。不動産投資による利益の確保に、金持ちのお金が集中しているのです。われ先に買い求めているのです。ですから不動産価格は上昇の一途をたどります。
その風潮に乗って政権幹部や官僚たちも動き、不祥事が山ほど出ており、不祥事が発覚するたびに、文在寅政権は「共に民主党」の同じ仲間の犯罪行為のために糾弾されるということの繰り返しが起きています。
韓国は金持ちとそうでない者たちの格差が広がり、経済格差の問題が深刻で、金持ちたちは金を遊ばせておくわけにもいかず、何かいい金儲けはないかと不動産投機に走っています。
この悪弊を止められず、文在寅大統領は適切な対応策を講じることができていません。
どこの国でも、利益をむさぼる階層と一般庶民の対立関係はありますが、それが韓国では先鋭化してきている傾向があり、国民のための政治を果たして文在寅政権は行っているのかという疑問が大きくなってきています。
北朝鮮を助けることにはやぶさかでない割に、自国民を大切にしているのかどうかに対しては案外、無関心なのかもしれないという不信感を持たれても仕方がないと言えるのではないでしょうか。