コラム・週刊Blessed Life 161
脱炭素社会と「新型原子炉」の開発

新海 一朗(コラムニスト)

 2011年3月11日、東日本大震災の巨大な被害と同時に起きた福島原発事故による大災害は、原子力発電所から供給される電力というものに対して、悲観的な見方を決定的にしました。
 人々は、原子力発電所の安全性が確立されない限り、電力を原発に頼ることは危険なことであり、できるなら原発は廃止した方がいいとまで考えるようになりました。

 一方で、CO₂(二酸化炭素)の排出削減が世界的に叫ばれ、その元である火力発電を極力抑えなければならないという声も大きくなりました。
 火力発電は、化石燃料(石炭・石油・天然ガス)を燃やしてその熱エネルギーを利用して発電を行うのですが、発電の過程でCO₂を排出する火力発電を規制する考えが気候変動枠組条約締約国会議(COP)で示されるようになりました。これが地球温暖化の原因となる温室効果ガス(CO₂など)を規制するという動きです。

 結局、「原発は駄目、化石燃料も駄目」ということになれば、自然の力を利用したエネルギーに頼るのが一番だろうということで、太陽光発電、水力発電、風力発電、バイオ燃料など、いわゆる、再生可能エネルギーと称されるエネルギーを中心に、これからのエネルギー問題を解決すべきだという主張が、大きな流れになっている現状があります。
 しかし再生可能エネルギーは現在のところ、化石燃料に代わるほどの電力供給を行うことができているかと言えば、そうではありません。

 わが国の現状では、2011年度において、化石燃料80.2%、原子力9.3%、再生可能エネルギー(水力、バイオマス、太陽光、風力、地熱)10.4%で、再生可能エネルギーは1割に過ぎません。それが、2018年度になると、化石燃料76.9%、原子力6.2%、再生可能エネルギー16.9%で、再生可能エネルギーは約17%になっていますから、少しは増えたと言えます。

 ただ、地球温暖化を防ぐために化石燃料への依存を大きく減らしていくとなれば、その分、再生可能エネルギーを大きく増やさなければならないということになりますが、コスト面、保存技術など、簡単ではないようです。

 そこで、最近の世界的な動きに原子力エネルギーを見直そうという空気が出てきており、いろいろと取り組みが始まっています。
 その理由として、原子力発電はウラン燃料が核分裂した時に発生する熱を利用して発電するため、太陽光発電や風力発電と同じように、発電時にCO₂を排出しないということが挙げられます。
 原子力発電は地球温暖化防止の観点で見ると、優れた発電方法というわけです。

 ここにきて原子力発電の再生が見直され、「新型原子炉」の開発を各国が競っているのです。
 「小型モジュール炉」などは安全性も高い新概念の原子炉であるといわれますが、日立や東芝も参入の構えです。
 日本政府は、2050年に温室効果ガス排出ゼロを宣言し、その意気込みを見せています。それは、化石燃料を全面的に縮減するという宣言に等しいわけですから、当然、原子力と再生可能エネルギーでカバーするしかありません。

 すでに世界では、「第二の原子力ルネサンス」が始まっています。従来のものとは異なる発想の技術で開発を進め、原発を稼働させる取り組みです。
 新世代の原子炉は、冷却や燃料の構造も既存のものと全く異なります。

 さて、原発に革命的な変化は起きるのでしょうか。