子育て道しるべ 11
青年期(1)

(APTF『真の家庭』157号[11月]より)

須永孝子

青年期は精神的、生活的自立の時

 高校卒業後からを青年期としてその教育について考えたいと思います。

 乳幼児期、小学生期、中高生期はまだまだ親の傘下にあり、親の脛(すね)をかじっている時期であります。しかし高校卒業後からは、個人差はあるかもしれませんが、精神的に生活的に自立して行くようになります。だから家庭においても父母はそのように精神的、生活的に自立出来る子供に教育して行くことが大切であります。

 あるデータによると日本の青少年は将来や職業に対して明確なイメージが持てず、将来に対して自信が持てない状況であると言われています。自分の将来像はかなり漠然としたもので、切実なものではなく、また勉強に対するやる気が失われていると言われています。

 大学選びや会社選びについては、まず自分が将来どのような分野に進むのかを考えて選択しないといけません。とりあえず大学に行ってから将来のことは後でゆっくり考えようと思っていると大きなつまずきとなります。就職についても同じであります。学生生活を自由気ままに過ごしていると、就職活動や社会に出て働く時に人間としての未熟さを感じたり、人間関係の大変さを知ることになります。「人生の知恵」を身につけるためには、「世の中」という生きた学校において身につけていくしかないと森信三先生は語られています。

教育の原点に返り元返しの教育

 青年期はそれまでに受けてきた教育を体得し、自分の人格として表して行く時期でもあります。ですから不足なものがあれば元返しの教育をしていかなければなりません。

 教育の原点として森信三先生によると第一の教育の基本は「躾(しつけ)」です。①あいさつをする②返事をする③靴をそろえる。第二の教育の基本は「心情性の醸成」。心温かき人になる、先祖、目上を尊ぶ心を育む。第三の教育の基本は「立腰(りつよう)教育」人間の主体性を立てる、根性のある人間にするとあります。

 「論語」の志学章に「吾十有五にして学に志し、三十にして立ち、四十にして惑わず。…」というのがありますが、「人間が人格完成しようと思えば、30歳になるまでは苦労してみなければならない」。15歳から30歳までは修業の時代で一生の基礎形成期と言われています。「人生どん底を這いずり回るような絶望の坩堝(るつぼ)に、一度ぐらいははまって、その中で新しいものを発見するようなことを体験したら良い」「一か所だけ、一方向だけ見ていても大事は成せない、世の中のあらゆることを経験することが大切だ」とも言われます。