2020.09.19 12:00
「平和の母」が流した七つの涙 5
【第五の涙】哀魂に流す涙
浅川 勇男
「平和の母」シリーズ第3弾。自叙伝書写の第一人者、浅川勇男氏による「『平和の母』が流した七つの涙」をお届けします。
「哀魂(あいこん)」とは、惨殺されるなど、怨みや哀しみを抱いて彷徨(ほうこう)する霊魂を言います。
現代では、ナチスによって虐殺されたユダヤ人、共産主義政権によって粛清された人々、人種差別で悲惨な死を遂げた黒人奴隷たちです。
先祖を慰霊するのは子孫であり、自国の戦死者を慰霊するのは愛国者です。
家族でもない他国の哀魂を、真心から慰める人はなかなかいません。
韓鶴子夫人は人類の涙を拭う「平和の母」です。哀魂たちもまた、涙を拭うべき人類なのです。彼らの切なさ、悔しさ、無念な思いを慰労し、怨みや哀しみを母の愛で溶かすのです。
人間から傷つけられた霊魂は、天母の愛によってのみ癒やされるのです。
「暗い歴史に翻弄され、無念な死を遂げた霊魂を救うことこそ、独り娘が果たすべき重要な使命です」(韓鶴子総裁自叙伝『人類の涙をぬぐう平和の母』359ページ)
「平和の母」は、オーストリアのマウトハウゼンでナチスドイツによって虐殺された30万人の哀魂を解怨しました。
「永遠の愛を込めて白い花束を捧げるとともに、犠牲者の霊魂を慰める告天文と衣冠を用意して、解怨式を厳粛に行いました。彼らが過去の悲しみと怒りを振り払い、澄み透った霊魂として、平穏な安息の場で幸せに暮らせるよう、祈ったのです」(同154~155ページ)
カンボジアは、共産主義政権により数百万の人々が虐殺されました。「平和の母」は、犠牲者や、無知の故に虐殺を行った青年・学生たちの霊魂をも解怨しました。
「私は祝祷を通して、まず天の父母様を慰労してさしあげました。カンボジアの大虐殺を御覧になり、誰よりも心を痛められた天の父母様です。続いて、無念の死を遂げた霊魂を解怨しました」(同369ページ)
そして、世界史上最も残酷な死を遂げたアフリカ黒人奴隷たちを解怨したのです。
16世紀、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ大陸を結ぶ「三角貿易」が始まります。ヨーロッパ産の綿布や酒をアフリカ西海岸へ運び、黒人奴隷と交換してアメリカ大陸に運び、砂糖、綿布、タバコと交換してヨーロッパへ運んで利益を得たのです。黒人奴隷数は2000万人でした。
頭をそられ、会社のブランドを体に焼き付けられ、足首に鎖を付けられ、船倉に詰め込まれました。マラリアや天然痘で死んだ者は海に投げ捨てられ、サメの餌になりました。
「私は…奴隷となった人たちの解怨のために切実な祈りを捧げました。…既にこの世を去った霊魂を解怨するのは、生きている人の心情を慰めることよりはるかに困難です。それは人類を救う使命を持った独り娘の切実な求めがあってこそ、できることなのです」(同332~333ページ)
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