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映画で学ぶ統一原理 11

(この記事は『世界家庭』2018年12月号に掲載されたものです)

ナビゲーター:渡邊一喜

『ペイ・フォワード』
2000年。123分。

〝恩を受けたら、その恩を3人に渡そう〟
少年の思いが周囲を少しずつ変えていった

前編 第1章 創造原理

 私たちがよく知る「創造原理」の内容に「授受作用」がある。これは、あらゆる存在における生存と発展の原則である。信仰の実践として重要視される「ために生きる」という生活原理も、「授受作用」の原則と切り離して考えることはできない。授受作用をより深く理解するための教材として、映画『ペイ・フォワード』を紹介したい。

 キャサリン・ライアン・ハイドの小説を原作として映画化した作品で、『シックス・センス』『A.I.』で話題になった子役のハーレイ・J・オスメントが主役を務める。一人の少年の純粋な意思と努力が、社会変革の灯になっていくというヒューマンドラマである。

 主人公のトレバー(ハーレイ・J・オスメント)は11歳の少年。新学期、学校に赴任してきた社会科の担任が、初めての授業で課題を出した。それは、「社会を変えるためのアイデアを考えてくる」こと。悩んだ末、トレバーが考えたのは「次に渡せ」(pay it forward)というアイデアだった。恩を受けたら本人に返すのではなく、「次の人」に施すということである。しかも3人に、それぞれの人生を変えるような何かを。

 トレバーはさっそく取りかかり、思いつく限りの善意を尽くすが、人の人生を変えるのは思ったほど簡単ではなかった。そして全てが失敗に終わったと落胆する。しかし、彼の知らないところで、「次に渡せ」は思いもよらない広がりを見せていた。

 「授受作用」を考えるとき、1対1の関係で捉えやすい。しかし、私たちが生活する場はより複合的な共同体であり、さらにそれぞれの共同体同士も分かちがたく絡み合って被造世界を成している。そのため、恩を受けた相手に返すばかりが「授受作用」ではなく、「次に渡す」ことでより大きな意味での授受作用を促すことになる。そうすることで善意や愛が共同体内を循環するのである。

 私たちはこのような「社会の中の私」という視点を忘れてはいけないはずだ。この映画は、授受作用の全体的目的の側面を教えてくれている。

 また、これは登場人物がそれぞれの人生を見詰め直し、克服していく物語でもある。彼らが自らの人生に挑戦していく姿に、信仰や人生における多くのことを学ばされる。「授受作用」という「原理」の基本を、映画を通じて学び直してはどうだろうか。

(『世界家庭』2018年12月号より)

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