世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

米国務長官、対中関与政策との決別を宣言

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は720日から26日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。
 香港警察、民主派議員を逮捕(21日)。米、ヒューストンの中国総領事館閉鎖要求~24日閉鎖(22日)。ポンぺオ米国務長官、習近平国家主席を名指しで全体主義の信奉者と批判(23日)。中国、四川省成都の米国総領事館閉鎖命令~25日閉鎖(24日)。政府、韓国ビザの厳格化を検討徴用工訴訟巡る資産売却に備え(25日)。北朝鮮、コロナ疑い初認定開城封鎖(26日)、などです。

 今回は米国のポンペオ国務長官の「演説」を取り上げます。

 ポンペオ氏が723日、歴代政権が継承してきた「対中関与政策」との決別を宣言しました。関与政策とは、経済発展が民主化を促すとの考え方により中国に対して積極的に協力する政策のことです。

 ポンペオ氏は西部カリフォルニア州のニクソン元米大統領ゆかりの記念図書館で演説しました。関与政策はニクソン政権から始まったからです。
 講演会場には70年代と80年代に中国で起きた民主化要求運動で共産党政権に抗議し、米国に逃れた魏京生氏と王丹氏も招かれていました。

 この「宣言」は、対中政策の根本的転換を意味します。
 現在、両国関係の悪化は国交正常化以来の深刻さにありますが、コロナ禍にあって、中国側がワクチン開発情報への接触を図ろうとしていることも決断の背景であったと思われます。

 演説でポンペオ氏は、「ニクソン大統領の歴史的訪中によって、われわれの関与政策は始まった」としつつ、「ニクソン氏はかつて、中国共産党に世界を開くことで『フランケンシュタイン』をつくり出したことを心配していると言ったが、まさにそうなっている」と述べました。そして「古いパラダイムは失敗した。われわれは続けるべきではない」と明言したのです。

 ポンペオ氏は、「中国共産党政権がマルクス・レーニン主義政権であることに留意しなければならない」と述べ、「習近平総書記は失敗した全体主義イデオロギーの信奉者だ」と批判しました。
 米中は単なる覇権闘争ではなく、自由対共産の思想闘争が根本にあることを強調したのです。

 「レーガン大統領はソ連に対して信用するが検証せよ、としたが、中国共産党については『信用せず、検証せよ』だ」「自由世界が共産主義体制の中国を変えなければ、共産中国が私たちを変えてしまう」と警告したのです。

 そして中国に対抗することが困難な国々もあることを述べつつ、それ故にこそ、「新たなグループをつくる時かもしれない。新たな民主主義国の同盟だ」と有志国による対中連合を呼び掛けたのです。

 日本の決断、さらに結束の要になることが求められています。
 「中国共産党はいかなる敵よりも中国国民の正直な意見を恐れている」(ポンペオ氏)のです。

 習政権の覇権戦略転換を結束して促していかなければなりません。