青少年事情と教育を考える 119
出産適齢期を教えることの大切さ

ナビゲーター:中田 孝誠

 前回、一斉休校が続いていた間、子供たちから妊娠に関する相談が増えたという話を取り上げました。そして、中高生には妊娠の仕組みや正しい避妊法を教える性教育の前に、人格の完成を目指す人間教育の一環としての教育が必要であると述べました。

 今回は性教育のことを少し別の角度から考えてみたいと思います。

 日本の若者に妊娠や出産についての知識が少ないことは確かです。
 例えば、日本の若い女性は、妊娠しやすい年代、出産適齢期がいつ頃かといった基本的なことを知っている人が少ないという国際調査もあります。

 正解の割合が高い国では8割が知っていたのに対して、日本は4割にも満たない正答率だったというのです。専門家によると、妊娠しやすい年齢は20代から30代前半です。

 しかし、年齢が高くなると妊娠する力が低下することを知らず、30代後半や40代になっても不妊治療を行えば簡単に妊娠できると考えている女性が多いというわけです。また、出産年齢が高くなると、母体の健康に重大な影響を与える可能性も高くなります。

 出産を希望していても知識がなく時期を逃してしまうことになると、結婚と妊娠、出産、子育てという人生設計を思い描く人が後悔することにもなりかねません。実際、日本は不妊治療が多い国ですが、高齢になるほど妊娠する割合が低くなり、経済的にも大きな負担になっています。その意味でも情報を伝えることが必要になるわけです。

 ただ、性に関する教育は発達段階を踏まえたものである必要があります。中高生の段階では身体の変化や妊娠のしやすさの変化を教えるなど、年齢と成長段階に合わせて教える内容を考えていくことが大切だと専門家も述べています。

 一方で、出産適齢期を教えようとすると、女性に出産を強制している、国家の介入といった非難の声が上がります。しかし、出産を希望する女性に、その人の幸福につながる情報を提供することは、国や自治体の責任だと言ってもいいでしょう。

 結婚や出産につながる内容を、発達段階を踏まえて教育で取り上げることは幸福な人生を送るという点から大切です。これも性教育に対する一つの考え方だと思います。