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通いはじめる親子の心 15
私メッセージ

 もう一度皆さまにぜひ読んでいただきたい、編集部イチオシ!なコンテンツをご紹介。
 『通いはじめる親子の心』を毎週月曜日配信(予定)でお届けします。

多田 聰夫・著

(光言社・刊『通いはじめる親子の心〜子供の気持ちに「共感」する』より)

第三章 子供の気持ちに「共感」する

私メッセージ

 「統一原理」の創造原理で、すべてのものは授受作用によって生存し、繁殖、発展すると説かれています。それは家庭においても当てはまります。

 家族が互いに授受作用することによって、力が湧き、喜びが増し、幸福になります。家庭において良い授受の関係ができることが大事です。

 子供の気持ちを分かってあげたい、共感してあげたいという気持ちで、子供の話を聞くようにしましょう。親が子供の気持ちを共感できたとき、子供が「親は、私の気持ちを分かってくれている」と感じるのです。そして、親の愛情が子供に伝わるようになるのです。

 親の愛情が子供に伝わるのが、「共感的聞き方」、「積極的聞き方」ですが、親の子供に対する授受作用のもう一つが、「話す」ということです。子供に愛情が伝わる話し方が「私メッセージ」です。

 「私メッセージ」というのは、自分の感情的な思いではなく、共感したいという思いで子供に対する気持ちを、「私」という言葉を主語にして表現するものです。

 「私メッセージ」は、英語で私を「I」と言うことから、「Iメッセージ」とも言われます。それは気持ちや愛を伝えやすいことから、「愛メッセージ」とも呼ばれたりします。

 「私メッセージ」に対して、「あなたメッセージ」というものがあります。これは、「あなた」を主語にして言うメッセージです。「あなたは、こうしたでしょう」「あなたは、こうすべきでしょう」といった言い方です。この「あなたメッセージ」は、相手を非難したり、裁いたりする印象を与えがちです。言われたほうは、指摘されているようで、拒否感を感じるものです。

 「私メッセージ」の特徴は、相手(子供)の行動を善いとか悪いとか評価を下さずに、「私(お父さん、あるいはお母さん)は、こう思うよ」というように、自分の気持ちを表現することです。子供のどの「行動」が、「私」(親)にどのような「影響」を与え、「私」がどのような「感情」を抱いたのかを、しっかりと伝えるのです。

 親の「私メッセージ」は子供の気持ちを「共感」した土台の上でします。「私メッセージ」は、親の思いを、愛情を持って子供に伝えることができます。子供も、親の思いを知り、理解していくことができるのです。

 「共感的聞き方」や「積極的聞き方」ができるようになってこそ、「私メッセージ」を実践できるようになります。気持ちを共感できるような「聞き方」を何度も実践していく中で、「私メッセージ」で親の願いを子供に伝えることができるようになってきます。慣れるまでは、とても難しく感じるでしょうが、子供の気持ちを共感できるようになれば、自然にできるようになります。

 子供の行動や発言が問題だと親が感じるようになったとき、親はどうするでしょうか。第一は、「子供の行動を変えようとする」、第二は、「環境を変えようとする」、第三は、「自分自身を変えようとする」、このような三つがあります。

 例を考えてみましょう。子供が「テレビを見たり、ゲームをしたりして、なかなか勉強をしようとしない」とします。

 第一は、子供の行動を変えようとする。すなわち、テレビを見たり、ゲームをしないように、注意したり怒ったりします。

 第二は、環境を変えようとする。すなわち、テレビをなくす。ゲームを捨てる。(壊す人もいました)

 第三は、自分自身を変えようとする。すなわち、自分の感情を抑えて、子供の気持ちを共感しようとします。

 ここでまず、親と子供の位置を確認する必要があります。親子が心を一つにしようとすれば、親と子が縦の関係ではなく、横の関係にならなければなりません。親が権威をかざしたのでは、子供の心はますます離れていきます。

 親は往々にして、子供に行動を変えることを願い、要求しがちです。しかし、まず子供の心を共感し、理解してあげたいと思えるようになることが必要なのです。

 親が子供に「私メッセージ」を送ろうとするときは、どのようなときでしょうか。

 第一に、子供の行動を親が心から受け止められない、それをなんとかしたいとき、第二に、親の気持ちを子供に理解させたいとき、第三に、親の感情表現に対して子供に耳を傾けさせたいとき、第四に、親の欲求に対して子供が思いやりを示せるようにしたいとき、などです。

 では、どうしたら子供に「理解される」でしょうか。

 次のようなことを実践しましょう。

いつも自分に、次のような質問をしてみる

 「(今自分がしようとしている)この返答は、本当に子供に役立つだろうか? それとも、ただ子供を正したいという、親としての自分の欲求を満たそうとしているだけなのだろうか?」

 もし自分の中に怒りの感情があるならば、まだ返答すべきではないことを理解しましょう。心が落ち着くまで待ってみましょう。

「まず理解する」を心がける

 子供が何を大事に思っているのかを知り、この返答が子供の目標達成にどのように貢献するかを考えてみましょう。いつも子供に「愛の言葉」で語りかけるようにしましょう。意外と親は、まず子供に自分を理解してほしいと願っているものです。まず、子供の気持ちを「分かってあげたい」と思えるようになることです。

子供と、子供がしたこととを分けて考える

 子供を責めないで、自分の気持ちを伝えることです。また、子供にレッテルを貼って、先入観で見ないようにしましょう。

 子供が取った行動の結果がどうなっているかを説明し、親がどう感じたかを伝えます。子供と子供の問題行動を一緒にしてしまうと、「おまえは駄目な人間だ」という間違ったメッセージが、親から子供に伝わってしまいます。そして、子供は「自分は駄目な人間だ」と思い込んで、自信をなくしてしまいます。

 子供の問題点について話すときは、特に注意しましょう。

 改善するつもりがない人間に問題点を指摘しても、意味がありません。脅かすだけで、逆効果になることが多いのです。反発してしまい、関係が悪くなってしまうことも考えられます。改善できそうもないことは、指摘しないほうがよいのです。そして、少し時を待ってあげるのです。

「私は……」という言い方でメッセージを伝える

 自分の意見や感じたことを、「私は……」という言い方で伝えます。「あなた」で始まるメッセージは、子供の問題を指摘し、子供の行動を変えさせようとする表現となりますから、子供が親の愛情を感じることができないでしょう。ややもすると、子供を裁くことになってしまいます。

 自分の感情的な思いではなく、共感したい思いで、子供に対する自分の気持ちを「私」という言葉を主語にして表現するのです。それが「私メッセージ」です。「私メッセージ」は、「私はこう思う」、「私はこう感じている」というように、自分の気持ちを表現するのです。

 そうすると、子供が自発的に自分の行動を変えようという気持ちが生まれやすくなるのです。そのために、親は、子供にどの行動が親を困らせているのかを、子供が受け入れやすい形で伝えなければなりません。子供は、親がなぜ怒っているのかを理解していないことが意外と多いのです。

 例えば、父親が運転して、家族でドライブをしているとき、子供が楽しくて騒いでいたら、父親が急に怒り出して、「うるさい、黙っていなさい」と思わず言ってしまうことがあります。しかし、子供からすれば、なぜ父親が怒っているのか、理解できないのです。

 「車の中で大きな声を出すと、気が散って安全運転ができないので静かにしてほしい」。このように言えば、子供も理解することができるのです。伝え方が大事なのです。

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 次回は、「『行動』、『影響』、『感情』の三つを伝える」をお届けします。


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