コラム・週刊Blessed Life 120
コロナの日本人死者数はなぜ低いのか!?

新海 一朗(コラムニスト)

 コロナ禍の状況を見ると、612日午前3時の時点での世界の感染者は7426178人、死者は418052人となっています。感染者が最も多いのは、アメリカで2009238人、死者が最も多いのも、アメリカで113209人です。

 日本はどうかといえば、感染者が17332人、死者が922人です。他の国に比べると、感染者も多いとは言えませんが、死者の数が非常に少ないのです。
 この事実には、世界が驚いていることであり、また日本でもその理由を突き止めようと、専門家たちが調べているところです。山中伸弥教授が、「ファクターX」と名付けたその謎は、一体、何なのか…。

 これまでよくいわれてきたことは、日本人はよく手を洗う習慣がある、うがいが励行されている、インフルエンザ流行なども「マスク文化」のおかげで抑えられている、さらには、日本人はキスやハグをしないなどの、いわゆる、衛生意識の高さおよび日本の習慣などが挙げられています。それにしても、欧米と比べて、感染者数も死者数も極端に低いのはなぜなのか。衛生意識が高い、日本的習慣がある、ということだけなのでしょうか。

 重症化リスクに関していえば、BMI(体重÷身長の2乗)の値が高い、すなわち、肥満の人は新型コロナウイルスによる重症化リスクが高いといわれてます。

 さらに、BCGワクチン接種の有無が重症化に影響を与えているということです。BCGワクチンを打っている国では、死者数が少ない傾向が見られるのです。しかし、こうした説明だけで、果たして、「ファクターX」が説明されたといえるのでしょうか。

 アメリカ全国保健統計センターが人種別の死亡率を公表しています。それによれば、アメリカの新型コロナウイルスの流行地域において、アジア系住民のコロナ感染の比率は11.5%であるのに対して、アジア系住民のコロナ死亡率はその半分の5.8%です。もしかしたら、人種による差異が存在するのかもしれません。

 以上のようなことから、日本の死者数の低さに対して、遺伝子解析による解明を急ぐ動きが出てきました。京都大、慶応大、大阪大など八つの研究機関がプロジェクトを立ち上げ、医療機関から同意を得た患者、計600人の血液を採取し、ゲノム(全遺伝情報)を解析するというものです。

 慶応大学の金井隆典教授によれば、人類は長い歴史の中でウイルスに負けない仕組みを作り出し、それが人種間に「多様性」として表れてきたとのこと。そこで着目されるのは、HLA(ヒト白血球抗原)であり、簡単に言えば、白血球の血液型ですが、一般的なABOの血液型よりもはるかに複雑に分類されており、骨髄移植でこの型がかけ離れていると拒絶反応が起きるそうです。

 新型コロナウイルスにおいて、人種による重症化リスクの違いがあるのならば、免疫の働きの差であると考えられ、それは、すなわち、HLAの差ではないかと仮定することができると、金井教授は考えています。
 研究の端緒は開かれたばかりであり、研究結果の第一報を9月くらいには出したいと語っています。