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氏族伝道の心理学 4
不安

 光言社書籍シリーズで好評だった『氏族伝道の心理学』を再配信でお届けします。
 臨床心理士の大知勇治氏が、心理学の観点から氏族伝道を解き明かします。

大知 勇治・著

(光言社・刊『成約時代の牧会カウンセリング 氏族伝道の心理学』より)

第1章 不安と怒り

不安
 まず、不安とは何かを考えてみましょう。

 不安は、心の問題や病気の大きな要因になります。不安自体は、堕落前から存在していたものです。『原理講論』の中には、次のような記述があります。「エバはルーシェルから、創造目的に背いたということに対する良心の呵責(かしゃく)からくる恐怖心を受けた」という一文です。私たちは、神様から良心を与えられています。その良心に背くとき、不安を感じるようになるのです。不安とは、「何か悪いことが起こるような気がして落ち着かない状態」を指します。

 良心は、理性よりも先に善悪を判断し、警告を与えてくれます。ですから、本来、不安自体は、私たちを正しい道へと導いてくれるための警鐘なのです。

 しかし、堕落により、心の知情意のバランスを崩すとともに、環境が悪なるものとなってしまったため、不安は良心作用として働くばかりでなく、変質して心を蝕(むしば)むようになってしまいました。

 ですから私は、本来神様から与えられた良心作用による不安とは区別して、この不安を「何か悪いことが起こるのではないか、という根拠のない思い込み」と定義しています。私たちの心の問題を引き起こす不安は、根拠がない思い込みなのです。根拠があるものであれば、その根拠を客観的に見て、合理的に解決していけばいいのです。しかし不安が大きくなると、そのように解決することができません。このまま、こんなことをしていて大丈夫なのだろうか、とか、大変なことになってしまうのではないだろうか、などと感じて、居ても立ってもいられない気持ちに巻き込まれます。そうした気持ちが不安です。

 不安になると、何とかしなくてはと思い、行動します。不安に駆られるという状態です。このような状態の時の行動は、多くの場合、あまり良い結果を生みません。なぜなら、先に述べたように、不安が先に立つと、客観的に物事を見ることができなくなり、合理的・合目的的に行動できなくなるからです。

 また、不安に巻き込まれると、何もしなくなり、身動きできなくなることもあります。周囲から見れば、きちんと対応しなくては大変なことになる、と思われるようなときでも、本人は何もせず(できず)に、周囲だけがやきもきしていることもあります。この場合には、不安により現実を直視できなくなっている状態、と考えられます。

 どちらにしても、不安が高まると、客観的に物事を見ることができなくなる、あるいは合理的・合目的的に行動できなくなる、ということは理解していただけると思います。

 このように、不安は心の問題や病気を引き起こす厄介者ですが、不安が不安のままでいてくれないということが、もっと大きな問題です。不安が大きくなると、イライラしてきます。つまり、不安は怒りに変わるのです。この怒りは、不安よりももっと厄介なのです。

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 次回は「怒り」をお届けします。


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