コラム・週刊Blessed Life 4
ドイツ人が神と慕う日本人医師

新海一朗(コラムニスト)

 肥沼信次(こえぬま・のぶつぐ、1908-1946)という人物をご存じだろうか。ここ最近、テレビやYoutubeなどでもようやく取り上げられるようになった。
 彼は「ドイツ人が神と慕う日本人医師」である。八王子(東京都)に行く用事があり、市の中心部の中町公園に建てられた肥沼信次博士の顕彰碑を見て、一体この人は誰だという疑問を解いていくと、とんでもない人物であることが分かった。

 日本医科大学と東京帝国大学で医学を修め、ドイツに渡った肥沼信次は、コッホ研究所を経て、最終的にはベルリン大学の教授になっているから、その優秀さは言うまでもない。
 彼は多くの発疹チフス患者を救った愛の医師である。第二次大戦中、欧州では数百万人が発疹チフスで亡くなった。ヴリーツェンという町で献身的な診療を続け、数多くの命を救ったのである。最後には彼自身もまた発疹チフスに侵され、天に召された。ヴリーツェンには日本の桜が百本植えられ、春には街のあちこちで美しく咲いた桜の花が、偉業を遂げた肥沼信次博士を喜ばせているようだという。