2020.04.28 12:00
世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
中国、北朝鮮に軍医師団派遣~コロナ対策か
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
今回は4月20日から26日までを振り返ります。
この間、以下のような出来事がありました。
金正恩氏、手術受け重体との情報を米CNNが報道—23日にトランプ氏が「不正確」と発言(20日)。米ミズーリ州がウイルス感染で中国政府などを提訴(21日)。新型コロナワクチン、英で治験を開始(23日)。中国、北朝鮮に人民解放軍総医院(301病院)から医療チームを派遣(23日)。中東やアジアでイスラム教徒のラマダン(断食月)が始まる(24日)、などです。
中国共産党は4月23日までに、北京市の人民解放軍総医院(301病院)から医療専門家チーム約50人を北朝鮮に派遣しました。
金正恩党委員長の健康問題との関係は不明ですが、中朝両国が新型コロナウイルス対応で協力態勢を取った可能性の方が高いと見ています。
「301病院」は中国最高レベルの医療機関とされ、中国共産党の歴代指導者の治療や健康管理を担ってきました。
今回の医療チームは中朝外交の軸を担う党対外連絡部トップの宋濤部長が率いる形で北朝鮮に入りました。
派遣が50人規模というのは、正恩氏個人に対する対応としては過剰であり、やはり「新型コロナ対応」を巡って幅広い支援を行うことが狙いではないかと思われます。もちろん、北朝鮮の状況把握を兼ねての内容です。
「産経」は4月26日付の一面で、脱北者による組織「北朝鮮人民解放戦線」(北民戦)が入手した「文書とリスト」の内容を報じています。それは、新型コロナの現況をまとめた幹部向けの報告書の中に含まれていたものであるとしています。
報告書によれば、北朝鮮のコロナ死者267人(3月末か4月初旬現在)に上るというのです。実態が隠蔽(いんぺい)され、全て「疑い例」で処理されているというのです。
4月10日現在、北朝鮮人民解放戦線(2010年9月9日結成)が入手したリストによれば、新義州<①隔離2416人 ②死者51人>、平壌<①125人 ②5人>、羅先<①6355人 ②20人>、清津<①5481人 ②13人>、咸興<①3218人 ②17人>、平城<①461人 ②23人>、となっています。
重複の可能性はありますが、報告された人数では隔離者4万8528人で死者267人は韓国を上回っています。
北朝鮮はいまだに世界保健機関(WHO)への報告では、感染者は「国内にいない」としています。実際は、感染を防ぐための自主隔離や強制隔離の対象者も死者も報告上、全て新型コロナの「疑い」患者として扱われているというのです。
北民戦責任者の崔正訓氏はまた、「住民ら自分が新型コロナとも知らずに亡くなっている」とも語っています。
文書では、地方からの移動が制限される平壌でも125人の隔離と5人の死亡とあり、金正恩氏が平壌を離れて東部の元山地域に滞在しているのも当然かもしれません。
また、北民戦が入手した1日付の住民向け通達文には、6月30日まで集会などの社会活動を自制することやマスクの絶対着用と毎日の入浴などを求めています。そして隔離違反者を処罰する点も強調されています。
崔氏また、正恩氏について、13日に平壌で施術を受けたが健康に問題なく軍視察の日程が組まれているとの情報を挙げています。
「文書とリスト」の確かさは不明ですが、中国医療団派遣は事実です。
今後両国から発進される公的情報に注目していきましょう。