青少年事情と教育を考える 111
学校休校と児童虐待への対応策

ナビゲーター:中田 孝誠

 学校の休校が長期化し、児童虐待の危険が高まるのではないかと懸念されています。

 家庭で虐待を受けていた子供はもちろん、日常的な虐待がなくても子供が1日中家庭にいて生活態度を注意することが多くなると、親の方もストレスをため込んでしまい、虐待に発展してしまう危険が高まるというわけです。

 この原稿を書いている段階では虐待相談などの具体的な数字は分かりませんが、各自治体も虐待やDV(家庭内暴力)に関する相談の電話を開設しています。

 千葉市では、支援が必要な未就学児や小中学生がいる家庭を、児童相談所の職員などが訪問しているということです。

 専門家は、虐待のリスクを抱えた児童相談所や自治体の担当部局による訪問、電話連絡が効果的だと述べています。

 ただ、これは今回の一斉休校になる以前からですが、児童虐待対策の課題として、専門的に対応できる人材が決定的に不足していることが挙げられています。

 政府は児童相談所の専門職として児童福祉司を4年間で2000人以上増やす方針を打ち出していますが、虐待問題に精通した人材を育てるには10年かかるといわれています。

 また、自治体では訪問による家庭支援が以前から行われていて虐待予防にも一定の効果があるといわれていますが、予算や人材の問題で十分な対応ができない自治体もあります。

 それだけに今回の事態でも、支援が必要な子供たちにどこまで対応できるかは見通せないのではないでしょうか。

 一方、これまでなかなか進みませんでしたが、虐待する親を立ち直らせる取り組み、あるいは家族関係を改善することで虐待を予防するという取り組みもあります。

 例えば、親子関係だけでなく夫婦関係に注目して、関係を改善し、子供が健全に育つ家庭環境を作るわけです。

 家族の在り方に着目し、子供が健全に育つ家庭環境を作る意識が社会全体で高まれば、児童虐待の発生を予防し、専門的な人材が不足する現状を改善する力になるはずです。

 今回の事態を教訓としながら、今まで進まなかった取り組みを進めるべきではないでしょうか。