2018.02.20 12:00
シリーズ・「宗教」を読み解く 3
宗教の共通目的
ナビゲーター:石丸 志信
宗教的ビジョンを共有する文化圏が国境を超えて世界的な広がりを見せていることは、宗教が単に個人の心の安寧を目的とするだけではないことを意味するものだろう。人の心の内なる葛藤、不安や恐れにさいなまれ、生きる意味を見いだせずひとり苦しむ人々に、慰めと安らぎをもたらすことは、宗教の役割として大きな比重を占めているのは間違いないだろう。
ところで、人は、平安な心を取り戻すと喜びが生まれ、その喜びを人々と共有したいと思うものである。ひとりでいるよりも、親、兄弟、友人ら心通い合う人々と共有する喜びの方が大きい。内面の葛藤を治め、良き人間関係を築いていくための土台となるものは何か、良き関係が築けない根本問題はどこにあるかを教えてくれるのもまた宗教ではないか。
目に見えない至高の存在を畏れ尊びながら、人々の慈しみある関係を築いていく中に、共同体を形成し、幸福な社会、国家、世界を築こうというのも、宗教的価値観から生まれてくるビジョンなのだ。