2020.04.01 17:00
歴史と世界の中の日本人
第36回 国際消防救助隊
世界を感動させた日本の救助隊
2008年5月12日、中国でマグニチュード7.9~8.0という直下型地震(プレート内地震)としては世界最大級規模の地震が発生した。「四川大地震」である。
被害は想像を絶するものであった。
被災による犠牲者の数は9万人にも及んだといわれている。
中国の要請により、外国の救助隊としては初めて、日本の国際緊急援助隊の一員として国際消防救助隊が被災地に入った。
5月17日の朝、日本の救助隊が16時間かけて崩壊したビルの瓦礫の中から母子を発見した。
既に亡くなっていたが、その母子の遺体に対して日本の救助隊は整列して黙祷を捧げた。
救助はできなかったが、亡くなった母子に黙祷する日本の救助隊の姿は中国国民の反響を呼んだ。
日頃、反日的書き込みの多い中国のインターネットの掲示板にも「ありがとう! 中国人民は彼らを絶対忘れない」「日本人は非常に礼儀正しい。日本の救助隊はプロフェッショナルで、規律正しい」「中国人は日本人の質(人格)を学ぶべきだ」など、友好的なコメントが溢れた。
重慶市の日本総領事館には三十代の男性から電話があり、「祖父から日本軍の蛮行を聞かされ日本が大嫌いだったが、今回の件で日本に対する嫌悪感が感謝と尊敬の念に変わった」と涙声で感謝の思いを伝えてきたという。
救助隊が帰国する際には、空港で税関の職員が総立ちとなって深々と最敬礼し、出入国客からは拍手で見送られた。
生存者の救出ができずに帰国した日本の救助隊であったが、空港で彼らを待っていたのは日本の中国人留学生たちの温かい拍手と感謝の言葉の出迎えだった。
日本の国際消防救助隊は世界でもトップクラスの救助能力を持つ。
そればかりでなく、規律と志気の高さ、辛抱強さ、そして命の重さに対する崇敬の念をもって任務を遂行する。
世界への貢献の証は経済の力だけではない。
日本の援助隊を通して示された日本人の価値観や生活様式、美徳にこそ、世界を感動させ、勇気をもたらす文化の力が内在しているのだ。
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次回は、「人類の未来社会を描いた日本人」をお届けします。