世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

韓国の新型肺炎、大邱市で集団感染

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は2月17日から23日までを振り返ります。

 この間、次のような出来事がありました。
 韓国・中道保守の政党が合併し新党「未来統合党」発足(2月17日)。中国外務省の耿爽報道官が米WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)紙記者3人の資格取り消し(19日)。韓国保健当局、新型肺炎流行の「初期段階」に入ったとの認識示す(20日)。日本、自由民主党、新型肺炎で党大会延期に(21日)。韓国、新型ウイルスへの警戒レベルを最高度「深刻」に引き上げる(23日)、などです。

 韓国での新型肺炎・集団感染の動向が注目されています。
 2月19日、新たに15人の感染者が判明しました。これまで31人と比較的安定していた感染者が急激に増えたのです。

 これは、31人目の感染者が通っていた大邱市の教会(新興宗教「新天地イエス教会」)での集団感染が確認されたためでした。
 23日には感染者数が602人になり、中国本土以外では、日本に停泊しているクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」を除けば世界最多の感染者数となっています。

 集団感染は、18日に感染が確認された女性信者と同じ礼拝に参加していた人たちを中心に起きました。中国への渡航歴がないことを理由に一部の感染者が検査を一時拒んだことがあったのです。海外渡航歴がなく自覚症状もなかった信者が、密室で行われる礼拝に複数回参加したことが事態を悪化させることになったのです。

 信者に接触した陸軍の軍人の感染も確認されています。さらに近くの慶尚北道の病院の院内感染の広がりとも関連していると指摘されています。

 感染者以外でも約1200人が症状を訴えており(22日現在)、今後、拡大するものと見られます。慶尚北道の工場での感染や稼働中止の情報もあります。

 韓国保健当局は20日、渡航歴がなくても医師の所見次第で検査すべきだとの内容を方針として明記しました。
 そして韓国政府は21日、大邱市や周辺を感染症の「特別管理地域」に指定しました。中央政府が直接対策に乗り出すと発表し、軍の医療スタッフを投入。臨時の保護施設の準備に取り掛かっています。

 韓国は、大邱市とその周辺以外でも首都圏の京畿道、釜山、忠清北道、大田、世宗、光州、全羅北道、済州島などでの感染も新たに確認され、新型コロナウイルスはほぼ全域に拡散しています。

 23日、韓国政府は警戒レベルを最高度「深刻」段階に引き上げました。
 さらなる感染拡大を防ぐ取り組みとして、国内にある全ての学校および幼稚園に春休みを1週間延長するよう命じました。

 レベルを最高度に引き上げたことにより、今後、鉄道・航空便の運航制限や企業の閉鎖命令を行うことが可能になっています。

 韓国の教育省が抱えている大きな課題があります。新学期を迎え、帰郷していた中国人留学生の入国がピークを迎え、週内に1万人、来週には9000人以上に達する見通しなのです。どのように対応するのか検討中です。

 新型肺炎が東アジアを揺さぶっています。何よりも終息に力を尽くさなければなりませんが、結果として政治、経済、外交・安保などの在り方の根本的変化が起きる可能性があることを視野に入れておく必要があるでしょう。