2020.02.18 12:00
世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
習近平独裁を揺るがす感染症
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
今回は2月10日から16日までを振り返ります。
この間、以下のような出来事がありました。
トランプ大統領、大統領選前の米朝会談望まず―米CNN報道(10日)。米、中国軍のハッカー4人起訴(10日)。フィリピン政府、米軍地位協定を破棄へ(11日)。米、ファーウェイを追起訴(13日)。湖北省と武漢市の共産党トップ解任―新華社報道(13日)、などです。
中国発の新型コロナウイルスによる肺炎感染拡大が続いています。
16日現在、中国本土で累計6万8500人、うち死者が1665人に上ったと中国国家衛生健康委員会は発表しました。
初期対応の遅れが指摘され、厳しく批判されています。
昨年12月8日、最初の症例が報告されたのですが、武漢市の保健委員会は公式通知を握りつぶしたとみられています。
12月30日、武漢市の李文亮医師が勤務先の病院で複数の患者に重症急性呼吸器症候群(SARS)と符合する検査結果が出たことを知り、SNSのグループチャットで「7人がSARSと診断された」と投稿しました。
その翌日(31日)、ようやく武漢市政府は原因不明の肺炎患者の存在を発表しました。およそ20日間、必要な対応は取られなかったのです。それどころか翌年1月3日、武漢の医師・李文亮氏が社会秩序を乱したとして、公安当局から訓戒処分を受けたのです。
中国の専門家グループの分析で新型コロナウイルスが発見されたのが1月9日。11日、中国内で初の死者が発表されました。13日にはタイを訪問した中国人女性の感染が判明し、海外への感染拡大が明らかになっていきます。それでも政権はまだ動きませんでした。
中央政府が動いたのは1月20日です。19日から雲南省を視察していた習近平主席が「感染を断固抑えよ」と指示を出し、23日、武漢が「封鎖」されます。
その頃、武漢に住む青年が、公安に連行されることを覚悟してネットにアップした動画が話題になりました。
青年は、武漢が封鎖される前日まで、マスクをしている人はいなかったと語ったのです。この肺炎についての情報が隠蔽(いんぺい)されていたことを疑わせるのに十分な内容でした。武漢封鎖の時、すでに約500万人(武漢の人口は約1100万人)が市外に出ていたのです。
1月25日、習氏主催の最高指導部会議で感染対策チームの設置を決定し、そのトップに李克強首相が就きました。
27日には李首相は対策責任者として武漢に入っています。
1月30日、世界保健機構(WHO)が「緊急事態」を宣言。2月7日、武漢の医師、李文亮氏が死去。13日、習近平政権は湖北省の蒋超良同省党委員会書記(62)と湖北省武漢市の馬国強党委員会書記(56)を解任する人事を公表しました。
問題の所在は独裁体制、「言論統制という封殺」体制にあります。
武漢市の周先旺市長は1月27日のテレビ取材で、情報開示の遅さを問われると、「地方政府は、権限を付与されてからしか公表できない」と漏らしています(「朝日新聞」2月3日付)。