青少年事情と教育を考える 100
小学校教員は“広き門”に

ナビゲーター:中田 孝誠

 教員採用試験の倍率が年々低下し、教員への道が広き門になっています。

 文部科学省が昨年12月に発表した令和元年度の公立学校教員採用試験の状況を見ると、全体の倍率は前年度の4.9倍から4.2倍に減少しました。
 受験者数は14万8465人で約1万2千人減少しましたが、採用数は約2千人増えて3万4952人でした。

 特に小学校の倍率が低く、過去最低の2.8倍でした。受験者数は4万7661人(前年度比3536人減)、採用者数は1万7029人(同1094人増)です。

 都道府県では、新潟県が1.2倍、福岡県が1.3倍、佐賀県が1.6倍など12の県市で倍率が2倍を切りました。全国平均で倍率が最も高かったのは平成12年度(2000年度)の12.5倍です。20年で学校現場の状況が変わっていることがうかがえます。

 また、中学校は5.7倍、高校は6.9倍で、いずれも低下しています。

 現在、学校現場では第2次ベビーブーム期に採用された教員の大量退職の時期にあることが、採用者数が増えている一因です。過去最高の倍率だった平成12年度から採用者数は約5倍に増えています。

 民間企業の採用が好転したため、採用試験に再度挑戦しようという人が減っていることも倍率を下げる要因になっています。

 倍率の低下で、教員の資質の低下を懸念する声もあります。
 一方、受験者は大学の教員養成課程を受講して専門性は持っているので心配ないという意見もあります。その意味では、大学の教員養成課程の効果を常に確認しておくことも必要です。

 最近は教員の不祥事、教員間のいじめなど、一部の教員に問題があることも確かです。文部科学省は採用を急増させるのではなく計画的な採用を行うよう各教育委員会に求めていますが、そうしたこととともに、教員自身の内省の機会となるような研修が必要ではないでしょうか。