2020.02.04 12:00
世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
英国、EU離脱―待ち受ける課題
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
今回は1月27日から2月2日までを振り返ります。
この間、以下のような出来事がありました。
日本政府、新型肺炎を「指定感染症」に指定(28日)。トランプ米大統領が中東和平案発表(28日)。英政府、5Gでファーウェイ製品の限定使用容認(28日)。英国、EU(欧州連合)から離脱(31日)、などです。
今回は英国のEU離脱問題を取り上げます。
英国は1月31日午後11時、EUから離脱しました。英国の離脱によりEU構成国は27カ国となりました。
英国はEUに遅れて参加(1973年)しています。その主目的は経済的利益でした。しかし参加当時から、国の主権をEUに委ねるような統合に対しては懐疑論が根強くあったのです。単一通貨ユーロ(EUにおける経済通貨同盟で用いられている通貨)を使っていません。
さらに2004年にEUに加盟した東欧諸国から移民労働者が英国に入ってきました。その後、経済や雇用情勢が悪化し、移民やEUへの不満が増大していったのです。
英国は2016年6月、EUからの離脱か残留を問う国民投票を実施しました。その結果、離脱派が多数を占め、EU条約に基づく離脱期限である2019年3月29日に向かって、英国政治は混乱を極めることになったのです。結果として三度の延長となりました。
メイ前英首相に代わったジョンソン英首相は昨年12月12日に総選挙を実施し、与党保守党が圧勝。議会下院の過半数を得ることにより、今年1月9日、離脱関連法案が下院で採択され、成立したのです。そして公約どおり、1月31日にEU離脱となりました。
今後、英国は大きな課題を克服していかなければなりません。
まず英国とEUは、自由貿易協定(FTA)、漁業権、安保などの将来的関係について合意を目指すこととなります。これらの合意ができなければ、経済・安保面で大きな混乱が生じることとなります。交渉期間は基本的に年末までとなっています。
「連合王国」解体の可能性を示唆する声もあります。
2016年の英国全体の国民投票では、スコットランドに限れば62%がEU残留を支持したのです。そして昨年の総選挙で保守党が大勝しましたが、スコットランドにおいては、圧勝したのは独立を訴えるスコットランド民族党だったのです。
そして米英関係の雲行きも怪しくなってきました。1月24日の米英首脳による電話会談が原因です。
電話でトランプ米大統領がジョンソン英首相に、「英国との関係にひびが入り、離脱の祝いを台無しにしかねない」と語ったといいます。
その理由は、中国通信機器大手、ファーウェイへの対応です。
英政府は28日、5G(第5世代移動通信システム)への限定使用を正式決定したのです。米国が「失望」したのは確かです。
今後の日英関係も重要です。
英国のEU離脱によって、昨年2月に発効したEUとの経済連携協定(EPA)に代わるものが必要です。特に日本から輸出する自動車の関税撤廃が大きな焦点になります。自動車は英国向け輸出の約2割を占めているのです。