青少年事情と教育を考える 98
香川県のスマホ・ゲーム条例

ナビゲーター:中田 孝誠

 香川県議会が検討しているスマートフォンやゲームに関する条例案(ネット・ゲーム依存症対策条例〈仮称〉)が大きな批判を浴びています。

 条例案では、子供たちのゲームを1日60分、休日は90分に制限。スマホの使用は中学生までは夜9時、それ以降は10時までの使用とするよう定め、保護者には子供とよく話し合った上で家庭のルール作りを行うよう求めています。条例に罰則はなく、あくまで努力義務を示した形です。

 条例で問題視されているのは、一つは実効性です。すでにスマホは子供たちの日常生活に浸透しており、このような条例を定めても効果がないというものです。

 もう一つは、こうしたことは家庭での責任で教えるか子供が自分で考えるべきことで、行政が家庭に介入すべきでない、あるいは行政がやるべきことではないという批判です。

 ただ、私は今回のメディアを含めた反対の激しさには、逆に違和感も覚えました。
 もちろん、時間制限を設けても、どこまで実効性があるかは分かりません。また、条例で定める前に、親子が話し合って家庭で考えるべきであるということも確かです。その上で家庭と学校で教育を進めることも重要です。

 ただし、家庭でのルール作りといっても実際には簡単ではありません。たびたび問題になるのが、親子間の認識の差です。
 内閣府が平成30年に行った調査では、ネット利用に関して「家庭でルールを決めている」という保護者は74.2%ですが、子供では58.5%でした。

 親が「うちはルールを作っている」と思っても、子供はそのルールを意識しているとは限らないわけです。家庭が責任を持つためには、親を啓発し支援する仕組みも必要です。

 条例案は県の責務について、市や町が行う施策の支援や情報提供、屋外での運動や遊びなど子供が安心して活動できる場所の確保、体験活動や地域との交流活動を促進する責任があると定めています。

 ちなみに、子供たちのネットやスマホ利用に関する内容は、他の自治体にもあります。例えば兵庫県では青少年愛護条例で、「保護者は…インターネットの利用に関する青少年の健全な判断能力の育成を図らなければならない」とし、ルール作りについても学校や事業者などが支援するよう求めています。

 また愛知県刈谷市では、学校から家庭への要請という形で夜9時以降は子供にスマホや携帯を使わせないという方針を打ち出し、話題になりました。

 子供たちのスマホ利用が年々長時間になり、危険な使い方をしていることがあるのは事実です。親を啓発、支援し、家庭と学校に対する支援を充実させることが今必要とされていることです。
 今回の条例案に対して賛否いずれであっても、子供の保護という視点から、そのような議論がもっとあっていいはずだと思います。