コラム・週刊Blessed Life 99
中国の「5G」は成功するか

新海 一朗(コラムニスト)

 中国の「5G」(第五世代移動通信システム)が注目を集め、いろいろと報道されています。

 中国は「5G戦略」を国家目標と完全に一致させています。5G戦略の推進力を中国型社会主義(国家資本主義、開発独裁型資本主義)による市場経済の世界化を中国の主導で図ろうとしています。
 大量の情報量を一気に超高速度で送受信できる5Gにより、世界経済を掌握するつもりだということです。さらには、情報戦略における中国の優位を米国の上に置くことにより、中国が経済力と軍事力を中心とする世界覇権を掌握する、という大それた目標を掲げて、5Gの開発と実用化を進めてきているというのです。

 そのことを恐れて、米国が取った行動が「ファーウェイ(華夷技為)」つぶしでした。
 米国の焦りは、米国において移動通信システムの開発が内輪争いで後れを取っていること、5Gの基幹となる通信網が欠乏していること、規制によって生産性が低いことなど、米国資本主義の非効率が、中国の開発独裁型の高効率のやり方に敗北を喫する可能性を強く感じたことにあります。

 基本的には、中国の5G戦略が世界制覇を目指すものである以上は恐れなければならないといえるでしょうが、本当に成功するか否かは冷静に見守る必要があります。

 実際にどうなっているのでしょうか。
 反トランプで固まっているシリコンバレーにおいても、中国企業への警戒は日々、強まっています。じわじわとトランプの中国いじめが効いてきて、中国の国内経済も大後退を始めています。

 TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の「中国抜き」に対して、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)は「米国抜き」でしたが、署名直前、インドが「やめた」と言い出しました。中国の意図にインドは乗りたくなかったと見られます。

 習近平の「中国快進撃」はすでに事実上の孤立状態に陥っています。米国のペンス副大統領は、米国は香港の民主派と共にあるとし、米国が抱いてきた願望、つまり、中国が民主的社会に転換できるという期待をわれわれは最早抱いていないと断言しました。

 米国は、「ファーウェイ」「ZTE」「チャイナモバイル」などの米国進出を排斥しています。実際、生きるか死ぬかの瀬戸際にあるのが、中国ハイテクメーカーの心境です。
 米国は次世代通信規格である「5G」を中国に越されてしまった場合、次の「6G」開発に本格的に挑む決意を固めています。これには日本とインドの協力が欠かせないというのが米国の本音です。

 米中貿易戦争の勃発以後、米国における中国からの投資は激減しています。ファーウェイ米国支社は、600人を解雇しました。
 習近平は弱り目にたたり目です。鉄鋼、セメント、石炭も斜陽化の一途をたどっています。外国企業の中国進出が激減し直接投資のドルが入ってきません。

 中国が景気後退期に入ったところで、5Gスマホが発売されました。中国巨大3社が「5G」スマホの販売とサービスを50の都市で開始しました。しかし、5Gスマホは、想定外の酷評で迎えられました。「価格が高いのに遅い」「パケット代が高すぎる」などの不平、不満が集中しています。北京などでは、データ処理時間は完全に期待外れというブーイング。

 中国の「5G戦略」の行方をしっかりと見守ることにしましょう。