2019.11.15 17:00
映画で学ぶ統一原理 2
(この記事は、『世界家庭』2018年2月号に掲載されたものです)
ナビゲーター:渡邊 一喜
「ヒア アフター」
2010年公開のアメリカ映画。129分。
霊界を描かずに、霊界の存在を静かに示す
霊界をテーマにした映画は、これまで幾つも作られている。事件に巻き込まれて命を落とした主人公が、霊になってもなお恋人を守ろうと奮闘するラブストーリー「ゴースト」。ブルース・ウィリスが小児精神科医の主人公を演じ、その結末も話題になった「シックス・センス」。教会内で一時よく見られていた映画としては「奇蹟の輝き」がある。霊界のようすがよく表現され、中でも地獄の描写は生々しかった。
見る者が霊の存在を信じるか信じないかによって大きく評価が分かれてしまう霊界映画だが、今回紹介する、クリント・イーストウッド監督、スティーブン・スピルバーグ制作総指揮、マット・デイモン主演の「ヒア アフター」は、ぜひ見ておくべき作品だと思う。
ストーリーは3人の登場人物を中心として展開される。秀でた霊視能力を有するが、その力ゆえにまともな生活を送ることができないジョージ(マット・デイモン)。旅行中の災害で臨死体験をし、それがきっかけで私生活も仕事も歯車がかみ合わなくなってしまったジャーナリストのマリー。不幸な事故により心の支えであった、ふたごの兄を失ってしまった男の子マーカス。それぞれのストーリーは完全に独立したものだが、3人とも強い焦りと葛藤の中に置かれている。ポイントは「霊界」だ。
この映画の特徴は、霊界を扱いながらも非現実的な描写がほとんどないことである。この作品が霊界について語っていることは、それが「ある」ということだけだ。ストーリーの焦点は霊界ではなく、あくまでも3つの人生の再生にある。そして、そこに霊界が深く関わっているのだ。ふだん私たちが、「見えない」という理由で忘れてしまいがちな霊界が、この映画では現実と並行した「次の世界」として静かに示されている。霊界の謎を解くような内容ではないが、それが私たちの傍らにあって、当たり前のように存在しているという描かれ方が、かえってしっくりくる。
霊界は、不可知で恐ろしい世界ではなく、ただ私たちの内面が顕在化した世界であるとも言える。私たちの生活と霊界がどのように関わっているかを考える一つの材料として、この映画はお勧めである。(『世界家庭』2018年2月号より)
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