コラム・週刊Blessed Life 88
吉野彰さん、ノーベル化学賞おめでとうございます!

新海 一朗(コラムニスト)

 吉野彰氏が歴代の日本人ノーベル賞受賞者の27人目となり、ノーベル化学賞を受賞しました。本当におめでとうございます。

 リチウムイオンの電池開発の功績、すなわち、小型で高性能の充電池として携帯型の電子機器を世界的に普及させ、IT社会の発展に大きく貢献したという功績によって、ノーベル化学賞を受賞することとなったのです。

 吉野彰氏は1948年大阪生まれ。京都大学工学部卒業後、旭化成工業に入社し、研究開発に専念しました。
 1992年にイオン二次電池事業推進部商品開発グループ長、1997年にはイオン二次電池事業グループ長、そして2001年に電池材料事業開発室長、2003年には同室フェロー、2015年に同室顧問を歴任した後、2017年に名城大学教授、旭化成名誉フェローとなりました。

 受賞歴としては、2004年に紫綬褒章、2012年に米国電気電子技術者協会メダル受賞、2014年に全米技術アカデミー「チャールズ・スターク・ドレイパー賞」受賞、2018年に日本国際賞、2019年に欧州発明家賞を受賞されるなど、数々の賞を受賞し、まさに発明の世界にどっぷりと浸かってきた研究開発のプロフェッショナルです。

 テレビなどで見る人柄は、飾らず、率直で、笑顔が自然に溢れる好人物です。こういう人柄とともに、研究一直線、探求心旺盛で誠実な取り組みを続けてきたことが、偉大な成果につながったものと思われます。

 科学に対する興味が湧いたのは、マイケル・ファラデ―の名著『ロウソクの科学』を読んだことがきっかけにあったといいます。
 身近な事柄の事象に対して、「なぜ」を突き止めていく姿勢は、京都大学での学びの日々から旭化成での研究開発の日々へと変遷して、ついにリチウムイオンの電池開発で開花し結実するところまで至ったということでしょう。

 今回の吉野氏の受賞は、米国の二人の教授、ジョン・グッドイナフ氏とスタンリー・ウィティンガム氏の三人で得た受賞になっていますが、吉野彰氏の実用化へのアイデアと商品化の努力がなければ、世界に恩恵を与えるリチウム電池が世に出ることは難しかったという多大な評価があり、まさに、リチウム電池の実用化において、吉野彰の名は永遠不動の金字塔を打ち立てたといえます。

 日本のモノづくりの遺伝子が、毎年のようにノーベル賞受賞の結実に至って、その報道に沸く姿を見ると、無条件に喜ばしく思いますが、先人たちの素晴らしい努力を喜ぶだけでなく、今後も、その精神を受け継いで、若い世代が次々に研究開発に研鑽を磨く姿を途絶えさせてはならないと切望します。

 縄文以来のモノづくり文化を担う日本人であるという誇りを失うことなく、世界の平和のために有益な技術と商品を提供する日本であり続けることが必要です。

 とにかく、今回も日本からノーベル賞が出たという出来事を素直に喜びたいと思います。吉野彰さんの受賞、心からお喜び申し上げます。