スマホで立ち読み Vol.3
『トランプ「超★保守改革」~神と自由を取り戻す!』(1

 「スマホで立ち読み」コーナーで取り上げる第3弾は、いま最も話題となっている新刊『トランプ「超★保守改革」~神と自由を取り戻す!』(世界日報社刊)です。

 物議を醸す言動ばかりが注目されるトランプ大統領ですが、米社会の左翼支配を打ち破り、宗教と家庭の復権を進めていることは、日本ではほとんど知られていません。12年間のワシントン取材歴を持つ著者が日本の歪んだトランプ像を覆します。

 というわけで、いま必読の一冊。今回は、5回にわたってスマホで立ち読みしていただきます。

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早川 俊行(世界日報編集員)・著

(世界日報社刊『トランプ「超★保守改革」~神と自由を取り戻す!』より)

★プロローグ
トランプはなぜ戦うのか

(1)「最後の賭け」に出た米国民
 「コックピットに突入せよ。さもなければ死ぬ。いずれにせよ死ぬかもしれない。コックピットに入っても、操縦方法が分からないからだ。だが、飛行機を着陸させることに成功するかもしれない。その保証はない。一つだけ確かなことがある。やらなければ、間違いなく死ぬ、ということだ」

 201695日のことだ。一本のエッセーがネット上に投稿された。タイトルは「フライト93選挙」。「フライト93」とは、2001911日に発生した米同時多発テロで、ペンシルベニア州シャンクスビルに墜落したユナイテッド航空(UA)93便のことだ。エッセーは米大統領選を2カ月後に控えた米国の状況を、ハイジャックされた航空機になぞらえたものだった。

 ハイジャック機がテロ攻撃に使われることを知った乗客たちは、コックピットに突入を敢行し、首都ワシントンが攻撃される事態を未然に防いだ。結果的に航空機は墜落し、全員が犠牲になったが、生き残るためにはテロリストたちから操縦席を奪い返すしか道はなかった。40人の乗客乗員は、座して死を待つのではなく、勇気を奮い立たせて「最後の賭け」に出たのである。

 そんなUA93便の乗客乗員と同じように、絶体絶命の状況に直面しているのが米国の有権者だと論じたのが、このエッセーだった。選挙戦を優位に進める民主党のヒラリー・クリントン候補がそのまま大統領に当選すれば、偉大な米国は間違いなく終わる。共和党のドナルド・トランプ候補を大統領に選んだとしても、その運命を変えられる保証はない。だが、それでも、チャンスは少なくともゼロではない。トランプ氏の特異なキャラクターに戸惑い、同氏に投票することをためらっていた保守派や共和党員に対し、座して死を待つくらいならトランプ氏に賭けてみるべきだ、そう訴えたのである。

 エッセーは「プブリウス・デキウス・ムス」という古代ローマの英雄の名前をペンネームにして書かれ、カリフォルニア州の保守系シンクタンク、クレアモント研究所が発行する季刊誌「クレアモント・レビュー・オブ・ブックス」の電子版に掲載された。掲載直後はほとんど注目されなかったが、2日後に保守派の人気ラジオホスト、ラッシュ・リンボー氏が番組で大きく取り上げたことをきっかけに注目を集め、米言論界で論争を巻き起こした。後に、エッセーの執筆者は、20184月までトランプ政権の国家安全保障会議(NSC)で戦略コミュニケーション担当大統領副補佐官を務めたマイケル・アントン氏であることが明らかになっている。

 このエッセーが大統領選の流れを決定付けたわけではない。それでも、冒頭でエッセーのことを取り上げたのは、米国の有権者の危機感がいかに深刻だったかを、最も分かりやすい例えを用いて表現したものだったからだ。つまり、このままでは偉大な米国は終わってしまうという切迫感から、米国民は「異端児」トランプ氏に国家の舵取りを委ねるという「賭け」に出たのである。(次週に続く)

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