愛の知恵袋 77
ネットトラブルから子供を守ろう

(APTF『真の家庭』193号[2014年11月]より)

松本 雄司(家庭問題トータルカウンセラー)

子供にスマホを持たせたが……

 最近よく受ける相談に、子供のインターネット関係の問題が増えてきました。今、私の手元に「インターネットトラブル事例集(平成26年版・総務省)」がありますが、トラブルは年々増えているようです。

 小学5年のA君は、オンラインゲームに熱中し、仲間外れにされたくない一心で夜中まで隠れてやるようになったのが原因で、睡眠不足となり遅刻が増え、学校でも集中力がなくなって成績はどんどん落ちてしまいました。

 B君の場合は、スマホで電池持ちが良くなるという無料のアプリを見つけ、インストールしましたが、それが不正なサイトで、電話番号やメールアドレスを盗まれ、不当請求や迷惑メールが頻繁に届くようになりました。

急増するネット依存とトラブル

 もっと深刻な問題もたくさん報告されています。高校2年のC君は、基本料金のかからないソーシャルゲームで遊び始めました。ゲームを優位に進めるために何度も有料のアイテムを購入し、支払いには無断で親のクレジットカードを利用していました。後日、クレジットカード会社から2か月分の利用料として400万円の請求がきました。両親はゲーム会社に免責できないか掛け合いましたが厳しい状況です。

 小学6年のD君は、冗談で友達の悪口をSNSに書き込んだのですが、友人を通じて相手に伝わってしまい、激怒した相手の反撃文がSNS上で広まって、学校に行けなくなってしまいました。

 また、中学3年女子のEさんは、ゲームサイトのミニメールで知り合った人と仲良くなり、その男性と会った結果、その後も執拗(しつよう)にメールで脅迫され、仕方なく再び会いに行って、性的被害を受けてしまいました。

新型ネット端末の普及と被害の実情

 警察庁の調査によれば、2013年下半期だけで、出会い系以外の一般の交流サイトを利用していたのに性犯罪の被害にあった子供が695人もいました。そのうち628人は携帯電話やスマホからアクセスしたものでした。

 今年3月に行われた総務省のアンケート調査では、子供が自分専用の携帯電話やスマートフォンを持っているのは、小学1〜3年が21%、小学4〜6年が30%、中学生が50%、高校生が86%でした。

 最近はスマートフォンの比率が急増しており、ゲーム機や音楽プレーヤーでもインターネット通信機能付きが増えています。利用できる機能やアプリが多いので、面白くて便利ですが、さまざまなトラブルに巻き込まれるリスクも格段に高くなります。

親ができる4つの対策

 まず第1に、子供の成長段階に合わせて、適切な利用をさせていくことです。

 IT時代と言われる現代社会では、「携帯もスマホもパソコンも一切持たせない」というわけにもいきません。これからの学業や仕事に必要な知識と情報の取得や、人との交流のためのツールには習熟しておく必要があるからです。

 そこで、子供の年齢、インターネットに関する知識と技術、そして、情報モラルと判断力など、成長段階に応じて必要最低限の機器を持たせることです。

 第2は、各家庭で“利用のルール”をはっきりと決めておくことです。

 その際大事なことは、ルールを一方的に押し付けるのではなく、子供とよく話し合って、もしトラブルが発生した時には、すぐに親に相談するように話しておくことも大切です。

 第3は、持たせる時に、必ず“フィルタリング”を設定することです。

 携帯電話、スマートフォン、パソコン、ゲーム機、タブレット型携帯端末、携帯音楽プレーヤーなどは、持たせる前にフィルタリングを設定することが必須です。

 フィルタリング設定によって、見知らぬ人と会って脅迫されたり、架空請求を受けたり、アプリ購入で個人情報が漏れたり、過剰利用による生活の乱れ等を未然に防ぐことができます。実際、昨年ネットで被害にあった子供の95%が未設定でした。

 保護者の皆様には、ネットで閲覧できますので、先の「インターネットトラブル事例集」(総務省)をご一読されることをお勧めします。あらゆる種類のネットトラブルの具体例と、その対策のために「子どもが気を付けること」、「親が気を付けること」、「教師が指導すべきこと」をわかりやすく書いてあります。また、フィルタリング設定の仕方の案内も掲載されています。

 そして第4は、子供に“人間付き合い”を増やしてあげることです。

 心の中に孤独感やストレスを抱えている子供が、ネット依存になりやすいと言われています。日ごろから子供の話をよく聞いてあげ、家族・親戚・友人達との“人間付き合い”を増やすようにしてあげることが、最も根本的で重要な対策なのです。