夫婦愛を育む 76
妻に褒められたい

ナビゲーター:橘 幸世

 お花をたくさんもらったからと、二世帯同居している義母が奇麗な薄ピンクの百合を花瓶に入れて持ってきてくれました。ボリュームもあり、とても華やかです。

 「わあ、お母さん、奇麗ですね~。ありがとうございます」と言うと、「あなたのようだわ」と80代半ばの母から飛び出す予期せぬお世辞。「あら~、お母さん、何も出ませんよ」と笑顔で返します。

 この母の一言、人生ひとまわりした私でも、正直悪い気はしないのです。
 半分は、義母と楽しい会話を交わしたから。もう半分は、やはり素直にうれしいからでしょう(100%社交辞令でもそこに下心がないので)。

 反対に、私が何か褒めた時、「あなたはいつも上手(じょうず)言ってくれてぇ」と母も笑顔です。

 誰でも褒められればうれしいですが、男性が称賛を求める思いは女性の比ではないと言います。何といっても、男性陣は、愛されるより称賛・尊敬される方がうれしいのですから。

 そんなことを思っていると、以前にテレビで見た、ある体操教室のことを思い出しました。

 そこは夜な夜な中年男性が集まる体操教室。
 夜8時過ぎ、サラリーマン風のおじさんたちがやって来て、マットの上で跳ねたり回ったりしています。30~50代の男性たちが仕事帰りにひたすらバック転の練習に励んでいる珍しい(?)その教室は、意外にも大盛況だそうです。

 バック転ができるようになりたい動機はさまざまで、子供にカッコいいところを見せたい、部下とのコミュニケーション改善のきっかけにしたい、子供の頃できなかったことをできるようになりたい、等々。

 ある40代男性は、自営業で妻と母が日中常に一緒にいるため、気分転換を兼ねて始めました。が、できるようになったある晩、妻を電話で呼び出します。「見に来て」。

 インタビューで彼は、もう何年も妻に褒めてもらっていない、と言っていました(それを自覚しているのは、求めているから、称賛に飢えているから、ですよね?)。

 やって来た奥さんの前で、見事バック転成功。さらにバック宙まで成功させます。妻は、夫の思いがけない雄姿に、「お~! すごい!」と拍手。彼は顔をほころばせます。まさにこの瞬間のために何カ月も、仕事の後に教室に来てひたすらバック転の練習を積んできたのです。

 女性の皆さん、改めて、夫を称賛するよう心掛けましょう。