シリーズ・「宗教」を読み解く 75
日本人は宗教的に寛容なのか?②
風土論と結び付いた一神教成立の歴史に関する誤解

ナビゲーター:石丸 志信

 「一神教は不寛容」という批判の問題点を続ける。

 第2点は、風土論と結び付いた一神教成立の歴史に関する誤解である。

 山折哲雄に代表されるこの種の意見は、不寛容な一神教は荒涼たる砂漠の風土から生まれた、台風などの災害にさらされた日本は受容的態度が強く外来の宗教を受容してきた、というもの。

 しかし、ユダヤ教、キリスト教、イスラームが成立した古代オリエント世界やアラビア半島は砂漠が広がる地帯だが、元々は多神教文化が支配的であった所。そこに唯一の神・創造主と共に生きるユダヤ教が登場する。
 メッカの聖地カアバは多神教の神々を祭る神殿だったが、イスラームの登場で偶像崇拝を排した。イスラームの教えは、預言者ムハンマドが受けた啓示に基づいている。

 キリスト教はユダヤ教を土台としている。ローマ帝国内の都市生活をするユダヤ人コミュニティーを経て、異邦人へと広がっていったものだ。

 風土論は宗教史から見て説得力を持たない。

 風土論に基づく一神教批判の背景には、西欧世界に対して日本の優位性を主張したいという動機が潜んでいるように見える。
 世界と日本をことさらに対比させ、日本の自然と文化の独自性を強調しているからだ。