2019.07.16 12:00
世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
米政権、対イラン「有志連合」呼び掛け
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
今回は7月8日から14日までを振り返ります。
この間、次のような出来事がありました。
米国防総省、台湾への武器売却計画を承認(7月8日)。米軍ダンフォード統合参謀本部議長が対イラン「有志連合」結成の方針発表(9日)。安倍首相、ハンセン病家族訴訟で政府の控訴断念(9日)。ホルムズ海峡でイランの軍事組織「革命防衛隊」による英国のタンカー拿捕(だほ)未遂事件発生(10日)。台湾に武器売却企業、中国制裁へ(12日)、などです。
今回は米政権の対イラン「有志連合」結成方針発表について説明します。
米軍ダンフォード統合参謀本部議長が7月9日、ホルムズ海峡などでの船舶の安全確保のため、同盟国などと「有志連合」の結成を目指す方針を発表しました。参加国が自国の船舶を護衛することを想定しており、米軍は指揮統制や情報収集などに当たると見られています。
米国とイランの対立は一層厳しくなっています。
イランは7月1日、「イラン核合意」履行放棄の第1弾として、低濃縮ウランの国内貯蔵量が上限とされていた300キログラムを超えたと発表。さらに7月7日、履行放棄の第2弾として核燃料ウラン濃縮度の上限3.67%を8日に超えることを明らかにし、9月上旬には合意履行放棄の第3弾として、核開発をさらに拡大すると警告したのです。「イラン核合意」(2015年)署名国である、独仏英がイランとの原油取引を保証しなければ、という条件付きです。
国際社会の懸念は、既述のようにイランが核合意の規制を超えるウラン濃縮を行ったことを受けて、米国がイランの核関連施設への攻撃に踏み切るか否かに集中しています。トランプ大統領は7日、「イランは気を付けた方がいい」とツイートしました。
独仏英がイランの要求どおりに動くのは難しい状況です。
特に英国です。7月4日、英領ジブラルタルの自治政府がイラン産原油を積んだ大型タンカー(シリアに輸送中と見られている)を拿捕したのです。
イランのハタミ国防軍需相は8日、「拿捕は国際法に反する違法行為」と非難。報復行為を示唆しました。そして10日、英国タンカーをイラン「革命防衛隊」の艦船が進路を妨害して拿捕しようとした事件が起こったのです。英国の護衛艦の警告を受けて未遂に終わりました。
日本は今、厳しい判断を迫られています。
自衛隊トップ・山崎幸二統合幕僚長は11日、「日米間でやり取りをしている。情勢を注視している段階だ」と述べました。
「有志連合」参加の根拠となる国内法を前提に、可能性として考えられるのは自衛隊法に基づく「海上警備行動」です。あくまでも自国の艦船を守るための警察行動です。
現時点では、米軍が指揮下に入ることを求めるかどうか、「有志連合」という形で派遣できるのかなど不明な点が多く、情勢の変化に注目しなければなりません。いずれにせよ、イランとの伝統的な友好関係を維持している日本は、極めて厳しい判断を迫られることになります。