青少年事情と教育を考える 66
中高年の引きこもり、推計61万人

ナビゲーター:中田 孝誠

 川崎市で小学生らが被害に遭った事件と元官僚の父親が息子を刺殺した事件を巡って、引きこもりが大きく取り上げられています。
 「8050問題」(80代の親が50代の引きこもりの子供の面倒を見る)が深刻化しているともいわれます。

 もちろん、引きこもりだったから事件が起きた、というわけではありません。ただ、難しい問題を私たちに示唆しているとも言えます。

 内閣府が今年3月、中高年(40歳〜64歳)の引きこもりに関する調査(「生活状況に関する調査」)の結果を公表しました。
 この調査では、「自室や家からほとんど出ず、かつ趣味や近所のコンビニ以外は外出しない状態が6カ月以上」の人を引きこもり状態と定義しています。

 調査の結果、中高年で引きこもりの人は全国で推計61万3千人でした。引きこもりの期間は「7年以上」が半数を占め、「20年以上」という人も2割でした。引きこもりが長期化していることがうかがえます。

 また、引きこもりになったきっかけは、「退職したこと」「人間関係がうまくいかなかった」「病気」「職場でなじめなかった」が挙げられています。
 そして、引きこもり状態について「関係機関に相談したいと思うか」という質問に、「思わない」という人が53.2%と半数以上を占めています。

 ちなみに、15歳から39歳の人は4年前の調査で推計54万1千人でした。
 最初に書いたように、引きこもりだから事件を起こすというわけではありません。ただ、そのまま放置してよいことではないはずです。
 引きこもりをサポートする会などからは、とにかく第三者に相談して親が孤立から解放されるのが大事、親が子供と向き合って対話することが重要、といった指摘がなされています。いずれにしても即効性のある対応は難しいと思われます。

 相談体制をきめ細かく整えることも必要でしょう。子供たちが小さい時から自分自身の存在を認めることができる自尊感情を育てることも重要です。
 家族全体を支え、家庭と学校、地域社会が支え合う体制を築いていくことが大切だと思われます。